農業の状況
営農型を農地別に見て行きたいと思います。日本の農地は1961年に608.6万haありましたが、2022年に432.5万haと29%減少しています。これは宅地等への転用や荒廃農地の発生等が原因です。荒廃農地は25.3万haあり、先ほどの農地432.5万haの5.8%分となります。
荒廃農地の現状と対策 https://www.maff.go.jp/j/nousin/tikei/houkiti/attach/pdf/index-27.pdf
まず現在農地として使用されている土地について見て行きます。自営農業者である基幹的農業従事者(1)は2000年に240万人だったのが、2023年では116万人と半減以下になっています。平均年齢は68.7歳で、年齢構成は70歳以上の層がピークになっているので、これから更に減少して行くことが見込まれます。
農業経営をめぐる情勢についてhttps://www.maff.go.jp/j/kobetu_ninaite/nougyoukeiei_jousei_r6apr_set.pdf
(1)基幹的農業従事者 : 15歳以上の世帯員のうち、ふだん仕事として主に⾃営農業に従事している者(雇⽤者は含まない)
農業従事者が農作業が出来なくなった場合にその子供が引き継ぐことが考えられますが、都市に出た子供が地元に戻って農作業を行えない場合もあるかと思います。その場合は代わりに農作業を行う人が見つかればいいですが、見つからない場合、その土地は耕作されない土地として荒廃農地になって行きます。
ここで営農型を導入し、新たに農業を担う人を作ることで農地が荒廃農地になることを防ぎ、農地として維持出来ることになります。
荒廃農地
では荒廃農地の場合はどうでしょうか。ここは耕作されていないため農地としての機能を果たしていません。2018年以降は毎年1.4万ha程度が荒廃農地となっていて2023年は1.44万haが荒廃農地となりました。
荒廃農地の現状と対策 https://www.maff.go.jp/j/nousin/tikei/houkiti/attach/pdf/index-27.pdf
この荒廃農地に営農型を導入することで農地として使われていない土地を農地として復活させることが出来ます。
この様に営農型太陽光発電により、農地を維持し、復活させることが出来る様になります。
農業委員会
営農型太陽光発電の一次転用許可も各地の農業委員会に申請書を提出することになります。農業委員会によって営農型太陽光発電への温度差があると聞きます。都道府県別に営農型の一次転用許可の実績を見ると、最大は千葉の636件に対し、富山県は0件ですし、同じ四国でも徳島県では246件に対し、高知県は8件などと地域によって対応が異なっています。
営農型発電設備の設置に係る許可実績(都道府県別)について(令和4年3月末現在)https://www.maff.go.jp/j/nousin/noukei/totiriyo/attach/pdf/einogata-8.pdf
これは地域で熱心に取り組む方がいるかどうか、首長が熱心かどうかにも関わっているかと思います。また、一次転用許可の期間が3年と言うのも金融機関から見た時の課題になっています。担い手が営農を行う場合、遊休農地(2)、第2種・3種農地を活用する場合は10年も認められる様になっています。更新時の要件も2024年4月からのガイドラインによって8割単収等明確になって来ましたが、一方で要件を満たしているものを更新出来ると言うものであって、要件を満たせば必ず更新するという訳ではないため改善の余地はあるかと思います。長期的に営農を担う方が見つかるかと言うのも大きな課題かと思います。
(2)当初は一次転用許可の期間10年の要件に荒廃農地を活用した場合が含まれていました。2024年4月のガイドラインでは遊休農地と言う用語に変更になっています。これにより荒廃農地の中の再生不可能な農地が含まれないことになります。なぜ荒廃農地(再生不可能な農地)が10年要件から外れたのかは確認が必要です。
農地が太陽光導入のポテンシャルが高いとはいえ、現状では地域の方々の自発的な取り組みの有無が営農型太陽光発電導入の鍵を握る状況と言ってよいかと思います。営農型太陽光発電導入を大きな流れにして行くためには各地域がどれだけ再エネを導入して行くかの具体的目標と実効性ある計画を持って行くことが必要かと思います。
計画例 : 環境省 改正地球温暖化対策推進法 : 地方公共団体実行計画 区域施策編
地球温暖化対策の推進に関する法律によって指定都市、中核市、施行時特例市は地方公共団体実行計画を策定する義務が出来ました。一方、それ以外の自治体は策定が努力義務になったため住民・事業者も含む排出削減計画である区域施策編の策定の割合が35.1%、うち、人口1万人未満17.4%、1-3万人23.8%と言った状況です。
地域脱炭素政策の今後の在り方に関する検討会 2024.6.28 https://www.env.go.jp/content/000234866.pdf
区域施策編が策定されている場合でもREPOS等からの導入ポテンシャルを示す程度で具体的な導入計画まで落とし込まれているものは少ないかと思います。そこまで行うには各地域のゾーニングをしっかり行う必要があるため簡単ではないかと思います。ただ、具体的計画にまで落とし込んでいくためにはそう言った数値目標が必要ではないでしょうか。
計画例 : 農水省 農業経営基盤強化促進法 地域計画
農業からの流れでは来年の3月までに農地利用の計画である地域計画を策定する必要があります。これも農地をどの様に使っていくかの計画になりますが、区域施策編と連動すると各地域での再エネ導入の具体化を推進できるのではないでしょうか。
地域計画
https://www.maff.go.jp/j/keiei/koukai/chiiki_keikaku.html
産業分野の営農型太陽光発電への取り組み
最近の産業分野での動きとしてクボタの取り組みがあります。栃木県、茨城県などの耕作放棄地等の農地に営農型太陽光設備5MWを設置し、その下で米、小麦、大豆等を作る様です。発電された電気は同社の筑波工場に送られ、同工場の9%の電気を賄う様です。
クボタが農業機械を製造する会社であるためこの取り組みは本業にも関連する点があるかとは思いますが、そうでない会社でも参考に出来る部分はあるのではと思います。
https://www.env.go.jp/content/000250812.pdf
https://www.kubota.co.jp/news/2024/management-20240318.html