太陽光発電の設置場所として建物設置の続いてJPEAで有望視されているのが農地です。農地の活用は農地を転用して太陽光パネルを設置する野立てと農地の上部に太陽光パネルを設置し、その下で農業を行う営農型の2種類があります。
野立て太陽光発電
農地に野立て太陽光発電所を設置する場合、農地を農地以外に変更するための農地転用許可が必要になります。各地の農業委員会に申請書を提出し、農業委員会は意見を付けて都道府県に申請書を回し、都道府県で許可されます。
全国の農地転用の面積を見ると2003年以降は毎年11,000-18,000ha程度で推移しています。2021年のデータでは植林・その他が31.4%、その他の業務用途(農林漁業用施設、駐車場・資材置場等及び基盤強化法による農業施設用地のための転用を含む)28.3%、住宅用地24%となっています。
太陽光発電所設置による農地転用(含む営農型)の割合は2019年11.8%、2020年9.1%、2021年6.3%です。最大値は2014年の14.9%ですが、概ね10%弱と言ったところです。
用途別農地転用面積の推移https://www.maff.go.jp/j/nousin/noukei/totiriyo/attach/pdf/nouchi_tenyo-33.pdf
太陽光発電設備を設置するための農地転用許可実績についてhttps://www.maff.go.jp/j/nousin/noukei/totiriyo/attach/pdf/einogata-7.pdf
植林・その他、その他の業務用途が自然を維持したり、農業に関連する用途と仮に解釈すると、自然、農業とは異なる用途で土地が使われるのが住宅用地24%、太陽光発電10%弱と言うことになります(除く営農型)。太陽光発電が農地減少の主たる要因とまでは言い切れないですが、農地を活用した野立て太陽光発電を大幅に増加させることは食料生産の点からは課題となるかと思います。 そこで今度注目されるのが営農型です。
営農型太陽光発電
営農型は太陽光発電と農業で太陽を分け合うと言う意味でソーラーシェアリングとも呼ばれ、日本人の長島彬氏が考え出したものです。太陽光パネルを載せる架台の足の部分だけ一次農地転用を行うことで可能となります。
これまで一次転用許可は局長通知と言う行政上の取り扱いで認められてきましたが、農地法施行規則上の制度となり、2024年4月から施行されています。またガイドラインも制定され、一次転用許可の更新の要件も示されました。
営農型太陽光発電に係る農地転用許可制度上の取扱いに関するガイドラインhttps://www.maff.go.jp/j/nousin/noukei/totiriyo/attach/pdf/einogata-15.pdf
営農型太陽光発電のための一次転用許可は2019年653件、2020年800件、2021年851件と少しづつですが増えてきています。下部農地面積は2021年で1,007.4haです。仮に1haに太陽光パネルを1MW張れるとすると、1,007.4haであれば約1GWになります。太陽光発電の導入量は2023年12月末時点で73.1GWです。単純に1GWを73.1GWで割ると1.4%、73.1GWはACでの容量なので過積載率を仮に1.2とみるとパネル容量(DC)は88GWになり、1.1%になります。1haに1MWと言うのは野立てでのもので営農型はパネルを張らない部分もあることを考えると営農型太陽光発電は1%弱と言ってもいいかもしれません。
太陽光発電設備を設置するための農地転用許可実績についてhttps://www.maff.go.jp/j/nousin/noukei/totiriyo/attach/pdf/einogata-7.pdf
太陽光発電の導入状況 大量導入小委 2024.6.13 https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/saisei_kano/pdf/063_s01_00.pdf
営農型は元々平らな土地を使うため造成工事に掛かる費用を低減できます。一方で農業機械を使った農作業を行おうとすると、架台の高さを3m以上、幅を5,6mと大きくとる必要があります。また、生育に太陽光を必要としない陰性植物以外を作る場合、日照を確保するためにパネル同士の間を開けたりすることで面積当たりのパネル設置数が減ることになります。
下で作る作物の収量は周辺の地域の収量の8割を下回らない必要があります。ただ、再エネタスクフォースでの議論により、荒廃農地を活用する場合はこのいわゆる8割単収の要件が適用されず、農地が適正かつ効率的に利用されているか否か、で判断される様になりました。
農山漁村地域の再生可能エネルギーの目標設定について https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/conference/energy/20220425/220425energy10.pdf