電気の脱炭素化 

今日は利用する電気の脱炭素化について考えて行きたいと思います。方策としては主に以下が考えられると思います。

  • 非化石証書等の環境価値の調達
  • 電力小売の再エネメニューを契約
  • コーポレートPPA (Power Purchase Agreement (電力購入契約)) オンサイト、オフサイト
  • 自家発電 (自社で再エネ発電所を設置) オンサイト、オフサイト(自己託送)

ちなみに省エネ法で求められている中長期計画書の2023年度提出分では、非化石エネルギー転換に向けた取り組みとして計画されているものは、太陽光発電の導入が約3割、非化石比率の高い電気メニューの選択(2割超)、非化石証書の購入(数%)と言う結果の様でした。

省エネルギー小委員会 2024.9.3 
https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/shoene_shinene/sho_energy/pdf/046_00_04.pdf

非化石証書等の環境価値の調達

まずは非化石証書等の環境価値の調達について見て行きたいと思います。環境価値としては主に非化石証書、Jクレジット、グリーン電力証書があります。

Jクレジットは全認証量が1256万t-co2ですが、比較を簡単にするために仮にこれを全量電気に使えるとするとJEPXの2023年度の排出係数0.000477CO2t/kWhから、全認証量は263億kWh分になります。日本の年間の電気の需要を1兆kWhとすると2%強にしかなりません。

グリーン電力証書についてはグリーン電力量認証が2023年では8.03億kWhでした。先ほどのJクレジットと同様に規模が非常に小さいです。

一方、非化石証書はFIT非化石証書の売り入札量は2023年度で2654億kWhでした。規模から考えると環境価値は非化石証書を中心に考えると良いかと思います。

Jクレジット 資料・データ集                https://japancredit.go.jp/data/#data01       

グリーンエネルギー認証第1回 WEB説明会https://www.jqa.jp/service_list/environment/service/greenenergy/file/seminar_docs_202404.pdf

JEPX 非化石証書 取引市場データ              https://www.jepx.jp/nonfossil/market-data/

非化石証書

確かにFIT非化石証書は2023年度で2654億kWhの売り入札量が出ていますが、約定量は338億kWhと売り入札量の12.8%程度でしかありません。多くが売れ残っています。ただ、約定率は年々高まっていて需要家の再エネニーズが高まるにつれ、今後も高まるものと推測されます。

2021年度2022年度2023年度
売り入札量 (kWh)2477億2797億2654億
約定量  (KWh)54億163億338億
約定率2.2%5.8%12.8%
注、2021年度は入札は3回のみ。2022-23年度は4回。

FIT非化石証書はマルチプライスの市場で最低価格0.4円/kWhの設定がありますが、売れ残っていることもあり、2023年度の第2回以降、4回ともに約定量加重平均価格も0.4円/kWhになっています。ただ、RE100企業等が公表している2030年の目標を達成するために非化石証書の調達を増やして行く可能性があること、RE100の15年ルールにより、FIT非化石証書の15年未満のものの数量が減少して行くこと等から2030年前後から需要が増え、約定価格も上がって行くと見られています。現状ではFIT非化石証書の上限価格は4円/kWhですが、2030年前後に4円に張り付くと見ている企業もあります。

(RE100の15年ルール)                                    稼働、リパワリングから15年以内の発電所から再エネを調達すること。15%以内まではこの要件を満たさなくても良いが、出来るだけ早く段階的に廃止することを推奨。FITは2012年7月から開始したため15年後の2027年以降、この15年ルールに抵触する発電所が出て来ることになる。どの程度のリパワリングであれば良いのかは確認が必要。

RE100 技術要件 https://www.there100.org/sites/re100/files/2023-02/RE100%20technical%20criteria%20%2B%20appendices%20%28Japanese%29.pdf

日本の非化石証書はここ数年制度が大きく変わっています。元々は取引される市場は一つでしたが、FIT非化石証書を取引する再エネ価値取引市場と、小売事業者が高度化法を達成するために非FIT非化石証書を調達する高度化法義務達成市場が出来ました。更に元々は最低価格は1.3円/kWhでしたが、再エネ価値取引市場の最低価格は最初は0.3円、現在は0.4円、高度化法義務達成市場の最低価格は0.6円と2つの市場で最低価格が異なっています。

再エネ価値取引市場高度化法義務達成市場
取引対象FIT電源FIP、非FIT電源 再エネ指定有り(水力、太陽光等) 再エネ指定無し(原子力等)
参加者電力小売仲介事業者需要家電力小売
最低価格0.4円/kWh0.6円/kWh
最高価格4円/kWh1.3円/kWh
約定処理マルチプライスシングルプライス
トラッキング全量 (2021年度~)全量 (2024年度~)

今後も制度が変わって行く可能性がありますが、需要と供給をよく見て行く必要があるかと思います。

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