日本での蓄熱システムの動きとして東芝エネルギーシステムズの岩石蓄熱を見てみたいと思います。
岩石蓄熱
東芝エネルギーシステムズは環境省の補助金を活用して岩石に熱をためる岩石蓄熱を開発しており、2022年には500kWhの試験設備を設置しました。その後、昨年、中部電力、新東海製紙、静岡県島田市と新東海製紙の島田工場に10MWhの設備を設置して技術実証を行うことを発表しました。
岩石蓄熱技術を用いた蓄エネルギーサービス事業に関する技術開発・実証の本格的な開始について 2022.11.21 https://www.global.toshiba/jp/news/energy/2022/11/news-20221121-01.html
岩石蓄熱およびエネルギーマネジメント技術を用いたプラントの技術実証を推進するための連携に基本合意 2024.11.13 https://www.global.toshiba/jp/news/energy/2024/11/news-20241113-01.html
新東海製紙島田工場での実証
2025年度末までに機器を製作し、2026年度に技術実証試験を行う様です。同工場内の電力を利用して電気ヒーターを稼働させ、その熱を岩石蓄熱材で構成する蓄熱槽に貯蔵し、最適なタイミングに工場で熱利用するほか、電力に変換して使用。また、余剰電力活用に向けた運用性を評価する予定とのことです。
新東海製紙島田工場には現状、以下の様なボイラー・発電設備があり、工場の85%の電気をまかなっている様です。
設備 | 台数 | 能力 |
R-1号ボイラー(回収ボイラー) | 1缶 | 170t/時 |
10号ボイラー(PS・木質チップボイラー) | 1缶 | 62t/時 |
11号ボイラー(木質チップ・RPFボイラー) | 1缶 | 74.6t/時 |
12号ボイラー(木質チップ・RPFボイラー) | 1缶 | 100t/時 |
火力発電設備 | 5基 | 80,590kW |
老朽化した10号バイオマスボイラーを廃棄し、新たに2027年1月竣工予定でバイオマスボイラーを建設する予定とのことです(製紙系廃棄物と木質バイオマス燃料・RPFを混焼70t/時)。
自社設備では必要とする電気すべてを賄えている訳ではない様ですが、その様な中で電気を熱に変換して貯める意味はどこにあるでしょうか。’工場内における電力の需要と供給バランスの課題解決’とあるので稼働上、電気の使用が落ちて電気が余ってしまう状況があるのでしょう。製紙工場でのエネルギー需要は熱と電気が2:1と言われている様なので、より多くの熱が必要だが電気は不要と言うタイミングがあるのかもしれません。あるいは出力抑制時や卸売市場の価格が低い時に電気を購入して熱に貯めると言うことを考えているのかもしれません。
なお、‘熱を電力に変換して使用’と言う記述もありますが、公表された図で見る限りは電気を作るタービンは含まれていない様に見えます。
脱炭素先行地域、岡崎市
脱炭素先行地域に選定されている岡崎市の計画にも東芝の岩石蓄熱が入っています。市の廃棄物発電施設に岩石蓄熱を設置するとのことで、’太陽光発電の増加に伴い課題となる昼間帯の電力供給過多等に対応するため、電力を熱に変換して貯留し、需要が増す時間帯にタービンによる発電を行う’とあるので、日中、ごみ発電の電気を熱として貯めて夜間に熱を電気に変換して電気を供給すると言う想定かと思われます。
どうする脱炭素?岡崎城下からはじまる、省エネ・創エネ・蓄エネ・調エネのまちづくりhttps://policies.env.go.jp/policy/roadmap/assets/preceding-region/2nd-teiansyo-13.pdf
岡崎市は良質な花崗岩(御影石)の産地と言うことなので岩石蓄熱に親近感を持ったのかもしれません。東芝エネルギーシステムズがその岩石蓄熱に花崗岩を使用しているかはわかりませんが。
計画では2027年度に岩石蓄熱を設置と言うことなので上記、新東海製紙島田工場の技術実証が終わった後に設備を設置するのかもしれません。
以前紹介したBrenmiller Energy社も蓄熱材として砕石を使っています。日本でも数年後に岩石を使った蓄熱システムが実際に使われる可能性があり、引き続き東芝エネルギーシステムズの動きに注目して行きたいと思います。