ケーブル盗難のリスク

オフサイトPPAでは出力抑制により電気の供給を受けられないリスクがありますが、他にも盗難のリスクがあります。

急増するケーブル盗難

北関東を中心に太陽光発電所でのケーブルの盗難が急増しています。ケーブル盗難を含めた金属盗の認知件数は2020年に5,478件だったのが、2023年は16,276件と約3倍に増えています。2023年の金属盗の内、32.9%(5,3161件)が太陽光発電所のケーブル盗難でその内、91.8%(4,922件)が関東で発生している様です。

警察庁 金属盗対策に関する検討会 2024年9月https://www.npa.go.jp/bureau/safetylife/scrap/meeting_material.pdf

ケーブル盗難の増加は保険金の支払金額にも現れています。日本損害保険協会によると2022年の保険金支払額は2017年の20倍近い金額になっている様です。やはり支払先は茨城県(21%)、栃木県(19%)、千葉県(16%)、福島県(9%)、群馬県(9%)と言った様に北関東が中心です。

太陽光発電設備向け火災保険(企業向け)の事故発生状況等に関する調査研究結果 日本損害保険協会 https://www.sonpo.or.jp/news/notice/2023/pdf/240209_report.pdf

なぜケーブル盗難が増えているのかと言うと2020年以降、金属価格が上昇傾向にあり、中でも銅が高価だからと言うことが先ほどの警察庁の資料に挙げられています。2023年の平均価格は1kgあたり銅は約1,131円、アルミは約185円、鉄は約47円と銅が高価だと言うことがわかります。

JX金属が公表している銅建値でも1トンあたり、2015年10月は676,500円、2024年10月は1,478,000円と2倍以上になっています。

JX金属 銅建値月間推移 https://www.jx-nmm.com/cuprice

対策

被害に遭っている太陽光発電所の規模は特高、高圧と言った大型のものだけではなく、小型の低圧も狙われている様です。盗難に入られると場合によっては数か月電気を売ることが出来なくなるので盗難に遭わない様な対策を取ることが求められます。

対策としてはセンサー、監視カメラの設置、ケーブルを地中に埋設することやこちらにある様に電線を引き抜けにくくするためにコンクリートや金属等で覆ってしまうと言うこと、警備会社の警備等が考えられます。

低圧でも盗難被害が急増、古典的な対策に一定の効果 メガソーラービジネスhttps://project.nikkeibp.co.jp/ms/atcl/19/feature/00002/00163/?ST=msb&P=2

また先ほど見た様に銅が高価であることが原因なので、銅線からアルミに換えることも対策となります。ただ、アルミの導電率は銅導体の60%なので同じ電流を流すには径を太くする必要がありますし、接続のための部品、器具も銅とは異なり、600Vまでのものしか流通していないのとそもそもアルミ導線のJIS規格もありません。アルミ銅線の本格的な普及にはもう少し時間が掛かるかもしれません。

古河電工産業電線 https://www.rakuraku-alumi.com/#spec

上記対策にはコストがかかることがオフサイトPPAの需要家としては悩ましいところです。

更に悩ましいのが保険金額が上がったり、新規で盗難保険をつけるのが難しくなっていることです。業界団体の太陽光発電協会(JPEA)、再生可能エネルギー長期安定電源推進協会(REASP)ではこの保険の問題につき連名で提言書を出しています。

“太陽光発電システムの持続可能な保険契約・運用の実現に向けた提言書” 並びに 「リスク対策チェックシート」「災害・盗難対策ガイドライン」について https://www.jpea.gr.jp/news/18024 https://reasp.or.jp/news/detail.html?CN=393937

更なる対策

発電所としてケーブルを盗まれない様にすると言う対策もありますが、盗難されたケーブルが買い取られない様にすると言うことも重要です。盗難されたケーブルの買い取りに関係する法令は古物営業法と各自治体の金属条例になります。

古物営業法は物をそのまま使う場合が対象で、盗難ケーブルの様に一度溶かして使う場合は古物に当たらない様です。また金属条例も2025年1月から施行する千葉県を含めて17道府県しか制定されていません。北関東だと茨城県と千葉県としか対応していません。この辺りは上記の通り9月から警察庁で対応が議論され始めたのでその検討会に期待したいものです。

盗難は直接的には発電事業者が影響を受けるものかと思いますが、需要家も再エネ電気を一定期間受けられなくなったり、コストアップにつながるので考えなければ行けないリスクです。

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