第7次エネルギー基本計画でもデータセンター等により、今後電力需要が増えると予想されています。データセンターの状況について見てみたいと思います。
データセンターの電力消費
アメリカのローレンス・バークレー国立研究所(LBNL)の報告書によると、データセンターの電力需要が今後3年で同国の電力の最大12%まで拡大する可能性があるとのことです。
電力爆食の米国データセンター、今後3年で需要3倍 2025.1.8
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/85876
またゴールドマンサックスによると蓄電池を併設した風力や太陽光発電がデータセンターの電力需要の80%までは供給可能だが、残りはベースロードとなるガス等の電源が供給する必要がある様です。
Is nuclear energy the answer to AI data centers’ power consumption?
https://www.goldmansachs.com/insights/articles/is-nuclear-energy-the-answer-to-ai-data-centers-power-consumption
京セラコミュニケーションシステムの石狩の事例
日本で再エネを活用したデータセンターがどの様な状況なのか、常時再エネ100%に向けて稼働を始めた京セラコミュニケーションシステムの事例を見てみたいと思います。
同社は2024.10.1に受電容量2-3MW、400ラックの「ゼロエミッション・データセンター 石狩」を開所しました。自営線でつなぐ自社保有の1.8MWの太陽光発電と設備容量112MWの石狩湾新港洋上風力発電所からの電力を使う様です。それ以外に蓄電池1.8MWhも活用するとのこと。
データセンターの消費電力の内訳をサーバー62%、空調・電源38%とすると受電容量3MWの場合、サーバー用は1.86MW、400ラックなのでラック当たりの平均は4.65kWになります。他資料によるとこの規模だとエンタープライズ向けDCに該当する様です。同社ホームページでは’GPUサーバーにも対応可能なAIデータセンター’と言っているので、一部に20kVAに対応するラックがあるのかもしれません。
エンタープライズ向けDC 2~4kVA
ハイパースケーラー向けDC 6~8kVA
生成AI向けDC 20kVA以上
AI社会とデータセンター
https://www.emsc.meti.go.jp/activity/emsc_localdemand/pdf/0003_05_00.pdf
データセンターの省エネ化・脱炭素化がもたらすインパクト
https://www.mitsui.com/mgssi/ja/report/detail/__icsFiles/afieldfile/2024/09/10/2408aoyagi.pdf
供給電源
3MWでフル稼働すると仮定すると年間の電力消費は2,628万kWhになります。1.8MWの太陽光が年間200万kWh発電するとすると太陽光では年間の電力需要の8%を供給することになります。一方で以下記事によると電源構成は、風力が約8割、太陽光が約2割の見込みとのこと。
石狩のデータセンター稼働、風力と太陽光で24時間ゼロエミ
https://project.nikkeibp.co.jp/ms/atcl/19/feature/00024/00061/?ST=msb&P=2
残りは洋上風力発電所からと言うことになります。この発電所には出力100MW、容量180MWhの蓄電池が設置され、洋上風力の出力変動を充放電制御で緩和している様です。
この蓄電池は以前北海道地区であった変動緩和要件を満たすためのものなので、データセンターに流す電力を一定にしていると言う訳ではないと思われます。
https://project.nikkeibp.co.jp/ms/atcl/19/feature/00024/00061/?ST=msb&P=3
洋上風力と太陽光の電力を合わせたものが一定になる様にデータセンター側の蓄電池で調整しているものと思われます。ただ蓄電池の容量が6MWhと3MWでデータセンターがフル稼働すると2時間しか持たないので蓄電池だけでうまく調整できるのかはわかりません。洋上と太陽光だけでは不足する場合や風が吹かず、太陽も照らない場合は系統からの電力も使える様になっているのかもしれません。
この洋上風力はFIT電源のため特定卸契約によってデータセンターに供給され、同発電所由来のトラッキング付きFIT非化石証書も供給される様です。前述の記事にもありますが、特定卸契約の場合は卸電力市場の価格の影響を受けるので、高騰した場合などどうするのか気になります。
石狩湾新港の洋上風力が商用運転、竣工式を開催 2024.4.25
https://project.nikkeibp.co.jp/ms/atcl/19/news/00001/04142/?ST=msb
稼働状況
開所して半年も経っていないためどこまで稼働しているかはまだ分かりません。ただ前述の記事によると、全国に点在するデータセンターをこのデータセンターに集約していく方針で、将来的にさらにラック数を増設していく予定とのことです。顧客がどの様な反応なのか知りたいところです。
またこのデータセンターは2-3MWと小規模ですが、300MW、1GWと規模が大きくなった際の電力供給をどうするかは大きなテーマなので引き続きフォローしたいと思います。
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