キリンビール千歳工場での水素の取り組み

千歳工場での水素実証

キリンビールの千歳工場で蒸気ボイラー用の燃料を都市ガスから太陽光発電で作ったグリーン水素に一部置き換える実証を2026.6から行う様です。ビール工場では麦汁煮沸などの加温工程で大量の蒸気を使用します。この蒸気の脱炭素化を進めるために今回太陽光発電から作る水素を使うとのこと。

太陽光発電の容量は2MWとのことですが、これは三菱商事が設置している太陽光発電を活用するのか、新たに設置するのかは分かりません。

キリンビール向け Non-FIT 自家消費型太陽光発電事業を 4 工場から 7 工場に拡大 2021.9.21
https://www.mces.co.jp/topics/files/pdf/34729418u027870.pdf

実証期間10年の間で供給される水素は年間70-80tとのこと。年間70-80tの水素をNM3に換算すると78万-89万NM3(1NM3=0.09kg)。78-89万NM3に必要な電気は水電解システムのエネルギー消費量を5 kWh/Nm3とすると390-445万kWh。

一方、2MWの太陽光の発電量は220万kWhなので不足する電気は170-225万kWh。2MWの太陽光で水素製造に必要な電気の49-56%を賄う計算になります。リリースのスキーム図にも太陽光発電設備 + 系統電力とあるので、不足分は系統から引っ張ってくると言うことの様です。キリンビールは購入する電気の再エネ100%化を達成しているので、不足分も再エネになるのでしょう。

千歳工場には日本サーモエナーがボイラーLTE2000GNMを12基設置している様です。
https://www.n-thermo.co.jp/case_study/case02.html

日本サーモエナー以外に三浦工業もボイラーを供給しているのかは分かりません。もし日本サーモエナーだけだとすると三浦工業は水素ボイラーにより、他社の顧客に製品を供給する足がかりを得ることになります。

三菱グループとして

キリンビールは三菱グループの会社のためエネルギーでも深いつながりがあります。三菱商事は2005年からキリンビールの福岡工場を皮切りに各工場向けにオンサイト発電事業を行っています。発電設備を三菱商事が設置してエネルギーを供給すると言うモデルを展開しています。これまでは重油を都市ガスに転換すると言う流れでしたが、これからは今回の取り組みの様に都市ガスを水素他の脱炭素エネルギーに変えて行くと言う流れになると思います。

三菱商事/キリンビール全工場向けオンサイト事業を受注 2004.11.7
https://www.lnews.jp/backnumber/2004/11/13854.html

と言っても以前見た様に水素の製造コストは高いので今回の取り組みもあくまで実証としてのもので、商用ベースには遠いと思われます。各社の熱の脱炭素の取り組みを引き続き注視して行きたいと思います。

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