24/7 究極の再エネ調達の目標?

再エネ調達においてグローバルで動きがある24/7について取り上げたいと思います。

Hourly Matchingと24/7

現在の再エネ調達の考え方では1年間で使用する電気の内、再エネではない電気に対してその分の非化石証書を調達して実質的に再エネを使用していることにしています。仮に年間100kWhの電気を使っているとして(お話を単純化しています)、その内、再エネを20kWh調達していることにすると、残りの80kWh分につき非化石証書を調達することで実質的に100%再エネを調達していると考えてよいことになります。年間で帳尻が合えば良いという考え方です。

これに対し、24/7はHourly Matchingと言う考え方をベースにしています。10月27日の10-11時に使う電気をその時間に発電された再エネで賄うか、その時間帯の非化石証書を調達するかと言うもので電気の使用を年間ではなく、1時間単位と言う細かい単位で見て行こうとするものがHourly Matchingで、それを24時間365日、再エネで行おうとするのが24/7です。

Hourly Matchingの考え方は排出量計算の基準となるGHGプロトコルにも取り入れられる流れになっています。現在、GHGプロトコルの見直しが行われていてスコープ2のガイダンスの改訂案にこのHourly Matchingの案が入っています。2022年11月から2023年3月まで意見募集がされた後、2025年にはドラフト案への意見公募がされ、2026年後半に最終版が出される予定の様です。GHGプロトコルのスコープ2のガイダンスが改訂されても日本にそれが取り入れられる可能性はもう少し先の2028年頃以降になるではないでしょうか。

GHG Protocol Corporate Suite of Standards and Guidance Update Process https://ghgprotocol.org/ghg-protocol-corporate-suite-standards-and-guidance-update-process

個別企業の動き

いちはやく24/7に取り組んでいるGoogleは24/7の達成は2030年を目標にしていて、2023年は達成率が64%の様です。

Google environmental Report 2024 https://www.gstatic.com/gumdrop/sustainability/google-2024-environmental-report.pdf

まだまだ先だと安心していていいのかと言うと例えばアメリカのIRA(インフレ抑制法)で水素製造時に優遇を受けられるのはHourly Matchingをされた再エネで作られた水素でないといけないと言う案も出ている様です。

Hydrogen Under 45V: Analyzing Electricity Availability Under Proposed Rules for the Hydrogen Tax Credit https://rmi.org/hydrogen-under-45v-analyzing-electricity-availability-under-proposed-rules-for-the-hydrogen-tax-credit

日本でもJERAが東宝と24/7カーボンフリー電力を段階的に導入する合意をしたり、その子会社のJERA CrossがHourly Matchingに向けた技術導入を行うことを決めた様です。

東宝スタジオにおける消費電力の CO2ゼロエミッションに向けた取り組みについて 2023/06/16 https://www.jera.co.jp/news/information/20230616_1504

JERA CrossとFlexidao社との戦略的パートナーシップ締結について~時間単位での再生可能エネルギーのデータ管理技術を試験導入~ 2024/06/25 https://www.jera.co.jp/news/information/20240625_1953

24/7でどうなるのか

日本では再エネ電源の中では圧倒的に太陽光発電の導入が進んでいますが、太陽光発電が発電しなくなる夕方以降、どの様に再エネを調達するかと言う問題が出て来ます。夕方以降、太陽光発電からの電気がなくなると非化石証書の価値が高くなると共に、日中の非化石証書の価格は安くなるかもしれません。日中、太陽光発電の電気を蓄電池に貯めてそれを夕方以降に放出すると言う発電事業者の動きが加速しそうです。

ただ、日本の非化石証書には時間が含まれていないため非化石証書で時間をどの様に取り込んでいくかが課題になると思われます。これはアメリカでも課題となっていてPJMでは対応出来る様になっている様ですが、それ以外では対応に時間がかかるため先ほどの水素でのHourly Matchingされた再エネ要件も2028年以降に対応すると言う案が出ている様です。一方で世界には20プロジェクトでHourly Matchingが行われていて、アジアでは台湾で2018年から行われている様です。

https://energytag.org/hourly-matching-exists-today-you-just-have-to-look 日本ではまずは年間で再エネを調達すると言うのが先決かと思いますが、それ程遠くない時期に24/7が求められる可能性もあるためそう言った動きはよく理解しておく必要があるかと思います。

タイトルとURLをコピーしました