水素、アンモニア、eメタンが普及する前に
水素、アンモニアはコスト、輸送等の点から通常選択されるエネルギーとなるまでまだ時間が掛かりそうですし、既存の導管を使えるeメタンも2030年にガス供給の1%が目標なので一定の規模を持ったエネルギーになるまでには時間が掛かりそうです。そうなると現状すぐ使えるものから熱の脱炭素を考えると、再エネを中心に考えていくことになると思います。
電気ボイラーに関しては以前考えてみました。電気ボイラーの可能性 その際、電気ボイラーの課題として「蒸気発生量が少ない」と言うことが挙げられていました。それを補うために化石燃料ボイラーと組み合わせて使うことが提案されていました。
常に一定の蒸気量が必要になる場合は上記ハイブリッド型が有効かと思います。一方で常に一定の蒸気が必要ではない場合、蒸気量が変動する場合は熱を貯めておくと言うことも有効な手段となる場合があります。
蓄熱システム
再エネ電気から熱を作り、それを貯めておくと言う運用です。この検討会の資料でも熱エネルギー貯蔵(TES)として、Energynest、Brenmiller、Kraftblock社のことが出ています。
定置用蓄電システム普及拡大検討会 2024.11.11
https://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/storage_system/pdf/2024_004_04_02.pdf
蓄熱スタートアップは海外ではこれら以外にもいくつか出て来ていて商用トライアルや商用レベルまで進んで来ている様です。
蓄熱方法
蓄熱の方法としては顕熱、潜熱、化学蓄熱と言う3つがあります。
顕熱はモノを熱すると温度が変化する時の熱のことで、例えば水を温めている時に水温が上昇しますがこれが顕熱です。
潜熱は水が氷になったり(液体→固体)、水が水蒸気になったり(液体→気体)などの状態が変化する時(相が変化)の熱を言います。
化学蓄熱は化学反応を使ったもので水酸化マグネシウムが酸化マグネシウムに変わる際に熱を貯め、酸化マグネシウムが水酸化マグネシウムに変わる際に熱を放出すると言ったものを言います。
顕熱はモノを温めてそれが熱を持つと言うシンプルな仕組みなので様々な材料を蓄熱材として使うスタートアップが出て来ています。先ほどの資料にあるEnergynestはコンクリート、Brenmillerは砕石、Kraftblockは鉄鋼スラグや耐火煉瓦を蓄熱材として使っています。
他にMaltaは溶融塩、Polar Night Energyは砂、Antora Energyはカーボンブロック、Rondo Energyはレンガや鉄ワイヤと言う様に各社コスト、蓄熱密度などから蓄熱材を選んでいる様です。
潜熱もスタートアップが出て来ていますが、アルミ合金を使っていたAzelio社は2023年に倒産してしまいました。ファイナンスがつかなかったので事業継続を断念した様です。同社は熱を貯めるだけでなく、熱から更に電気を作ると言うことまで手掛けていたので、よりハードルが高かったのかもしれません。
Is Azelio’s abrupt bankruptcy a bad omen for long-duration energy storage?
https://www.canarymedia.com/articles/long-duration-energy-storage/is-azelios-abrupt-bankruptcy-a-bad-omen-for-long-duration-energy-storage
潜熱は他にMGA Thermal社があり、実証途中の様です。
化学蓄熱はスタートアップとして活動している会社は見当たりませんでした。大学で研究されている状況と考えるとよいのではと思います。