変動性再エネである太陽光発電を補うものとして蓄電池があります。工場に太陽光発電だけでなく、蓄電池を設置した方がいいでしょうか。
工場に蓄電池を設置するメリット
工場に蓄電池を設置するメリットとして考えられるのが以下です。
・ピークカットにより、基本料金を削減
・太陽光発電の余剰を貯め、太陽光発電の電気をあますことなく活用する
・停電時に工場を維持
・市場取引で収入を得る(卸売市場、需給調整市場、容量市場)
・小売電気事業者の経済DRに参加
ピークカットにより、基本料金を削減
電気料金は設定した容量を超えると超えた容量をベースに基本料金が請求されることになります。年に1回容量を超えてしまうだけでも基本料金が変わるのでその時期に蓄電池から電気を供給して容量を超えない様にすることで基本料金アップを防ぐことが出来ます。
太陽光発電の余剰を貯め、太陽光発電の電気をあますことなく活用する
工場内等で太陽光発電を行っている場合、土日に工場が休みだと土日の発電分を捨てることになります。系統への逆潮を行わない様に太陽光パネルの容量を調整する場合は年間で最低の電力需要にパネル容量を合わせることになります。一方、電力需要のピークに合わせてパネル容量を考えたり、電力需要を超えてパネルを設置出来るだけ設置することにすると、需要を超えた電気が発電されるので、その需要を超えた電気を蓄電池に貯めて使うことが考えられます。
停電時に工場を維持
外からの電力供給が途絶えた時に、供給が再開されるまでの間、蓄電池からの電気で賄うことが考えられます。
市場取引で収入を得る(卸売市場、需給調整市場、容量市場)
卸売市場に参加するのであれば日中の安い電気を蓄電池に貯めて夕方以降の高い時に蓄電池に貯めた電気を売って儲けることが出来ます。ただ、卸売市場に直接参加する需要家は多くはないと思われるので、その場合は電力小売事業者との契約が市場連動型になっているのであれば、安くなる日中の電気を蓄電池に貯めて夕方以降に使うことで電気代を抑えることができます。卸売市場では日中に0.01円/kWhがつく時間が増えていますが、電力小売事業者がそこまで大きく電力価格を変えて需要家に電気を提供しているかと言うとそうではないので値差がどこまでになるかは要確認です。
需給調整市場や容量市場に需要家が単独で参加すると言うよりもアグリゲーターと契約して彼らがそう言った市場に参加するということはあるかと思います。
小売電気事業者の経済DRに参加
小売電気事業者が卸売市場から電気を調達している時に電気が高騰している時間帯に電気を調達して需要家に販売するよりも、需要家に費用を払って電力使用量を落としてもらって高い電気の仕入れを回避すると言う経済DRに参加することも考えられます。小売電気事業者から経済DRの依頼があれば、系統からの電気の使用を落とし、蓄電池に貯めた電気を使うことになります。
上記の様に蓄電池設置のメリットがあるとして工場に蓄電池を設置した方がいいのでしょうか。これは個々の工場がおかれた状況によって変わると言った方が良さそうです。
補助金
系統用蓄電池の国・東京都等の補助金、長期脱炭素電源オークション等によって系統用蓄電池の投資がブームになっていて蓄電池の価格もかなり下がって来ている様です。蓄電池での収入が変動することを考えると初期投資を出来るだけ抑えるために使える補助金は使った方が良いかと思います。
環境省の蓄電池の補助金として、民間企業等による再エネ主力化・レジリエンス強化促進事業)ストレージパリティの達成に向けた太陽光発電設備等の価格低減促進事業があります。
令和5年度補正、令和6年度ともに三次公募の採択まで終わった様です。https://www.eic.or.jp/eic/topics
補助金額の上限が太陽光発電は2,000万円、蓄電池は1,000万円なので、大型の設備設置がこれで賄えると言う訳ではありません。それはこの補助金を活用した事例を見てもわかります。
蓄電池の容量は数十kWhから数百kWhが多く、1,172kWhと事例の中で大きな容量の西川レベックス社の事例は蓄電池は補助対象外で導入したものでした。
ストレージパリティの達成に向けた太陽光発電設備等の価格低減促進事業 事例https://www.eic.or.jp/eic/re-ene2
西川レベックス株式会社 https://www.eic.or.jp/eic/re-ene2/r05_04.pdf#View=fitH
他の導入事例
日本ガイシとリコーは需要家側に第三者保有の蓄電池を設置するモデルを検証している様です。PPAと同様に需要家側で蓄電池に投資する必要がないモデルが出来ると設置のハードルが下がりそうです。
需要家併設の蓄電池で「第三者保有モデル」、事業性を検証へhttps://project.nikkeibp.co.jp/ms/atcl/19/news/00001/04268/?ST=msb
パワーエックスでは岡山の郵便局に蓄電池を設置して再エネ電気も供給するサービスを開始した様です。今回、郵便局に太陽光発電を設置するのではなく、蓄電池のみを設置する形の様です。この蓄電池はピークカットと買電タイムシフトを行う様です。
岡山郵便局にオンサイト蓄電池と再エネ電力を組み合わせた新ソリューションを提供 https://power-x.jp/newsroom/2024-10-09
まだまだ需要家への蓄電池設置はこれからと言った状況なので引き続きフォローしたいと思います。