ペロブスカイト太陽電池の開発でも注目されている積水化学工業の脱炭素の取り組み状況について見てみたいと思います。
積水化学の脱炭素に向けた取り組み
脱炭素に向けた大きな流れは以下になります。
- 2018年 化学業界において世界で初めてSBT認証を取得
- 2020年 RE100に加盟
- 2023年度 電力使用量の44.2%が再エネ
- 2030年度まで 購入電力を100%再エネに転換
- 2050年度まで 事業活動において使用しているコージェネレーション自家発電システムを含む全てのエネルギーにおいて、温室効果ガス排出量ゼロを達成していく構想

2023年度からは、生産プロセスの革新を図り、燃料由来の温室効果ガス削減に向けて検討を進めているとのことです。燃料使用設備の電化や低炭素燃料への転換、さらに「生産プロセス革新」による燃料由来GHG排出量の削減という技術的難易度の高い取り組みを前倒しで行う、とのことです。
もう少し具体策を見ると、燃料を使用している空調設備の電化と再エネ転換、重油ボイラーのLNG化、業務用車両のHV・EV化を推進、技術的難易度の高い蒸気発生源の燃料転換や「生産プロセスの革新」による使用エネルギーの削減を行う様です。https://www.sekisui.co.jp/news/2022/1379614_40074.html
電気に比べて難しい、熱の脱炭素にも積極的に取り組む様です。
国内での生産時のGHG排出量は20.7万トン/CO2(2023年度)で、電力37.1%、都市ガス40.5%、蒸気13.7%、A重油1.6%。また、分野別にみると10.8万トン/CO2(52%)が高機能プラスチックスカンパニー、次が7万トン/CO2(34%)で環境ライフラインカンパニー。以下では高機能プラスチックスカンパニーを見ていきたいと思います。
高機能プラスチックスカンパニーの取り組み
高機能プラスチックスカンパニーとしては武蔵工場、滋賀水口工場、多賀工場があります。武蔵工場は液化天然ガスによるガスエンジン式発電を行い、排熱で蒸気を発生させエネルギーとして再利用する高効率エネルギー供給システムを導入している様です。多賀工場は再エネ100%を実現している様です。
滋賀水口工場の状況
以下では滋賀水口工場を見てみたいと思います。
エネルギーの面から見ると以下の通りです。
滋賀水口工場 (2022年度実績)
購入電力量 970MWh/年
発電量 71,030MWh/年
重油 41kL/年
都市ガス 30,074千㎥ /年
蒸気 243千t/年
https://www.sekisui-minakuchi-kako.com/pdf/2024sitereport.pdf
CGS | 定格発電容量 (kW) | パッケージ | パッケージャー | 設置年 |
2号 | 4,500 | MSC50 | 三井造船 | 2003 |
3号 | 5,500 | 18MACH-30G | 三菱重工 | 2007 |
4号A | 815 | SGPM815-S | 三菱重工 | 2007 |
4号B | 815 | SGPM815-S | 三菱重工 | 2007 |
4号C | 815 | SGPM815-S | 三菱重工 | 2009 |
5号 | 6,650 | MSC65 | 三井E&S | 2019 |
CGS2,5号はガスタービン、他がガスエンジン
https://www.ace.or.jp/web/introductory/images/20130525114618_2.pdf
https://www.ace.or.jp/web/introductory/DocFile/Org/20240318151446_55_jiGazou2.pdf
2012年頃は構内の電力需要のうち、系統からの電気で15%、CGS発電で85%を賄っていた様です。2019年にCGS5号が稼働した後は自家消費、近隣のグループ企業に供給しても余るものは小売電気事業者に売っている様です。購入電力量を発電量と購入電力量の和で割ると1.3%になるので基本的に電気は自給している様です。また、蒸気も自家消費以外に近隣のグループ企業に供給している様です。
工場が立地するエリアは落雷が多い様で、瞬間的な電圧低下である瞬低を避けるために系統から切り離しても電力を供給出来る仕組みになっている様です。
CGSは都市ガスを燃料にしており、今後はこの脱炭素をどうするかが課題になるかと思います。都市ガスを環境価値をつけた形で調達するのが一番早いやり方に思えますが、燃料そのものの転換も考えて行くのではと思います。
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