リコーが再エネ総合評価制度により、営農型太陽光発電から電気を調達することになったため今回はこの動きを見てみます。
リコー、グループ初となる営農型オフサイトPPA発電所からの再エネ導入を開始
https://jp.ricoh.com/release/2025/0501_1
リコーの脱炭素の目標
リコーは2017年に日本で最初にRE100に加入した企業で、2040年にスコープ1・2(直接排出と購入電力による間接排出)のCO2・実質ゼロとRE100の達成、2050年にスコープ1・2・3(サプライチェーン全体)のCO2ネットゼロを目指しています。2021年には再エネ総合評価制度を導入し再エネ調達に当たっての考え方を明確にしています。
リコーの再エネ総合評価制度
リコーの再エネ総合評価制度は価格、追加性、再エネ種類、近接性、電源構成、地域貢献、CDPスコアなどの観点から、調達する再エネ電力を総合的に評価する制度で、価格だけで評価する訳ではない点が注目すべき点です。

2001年4月に本社建物向けに再エネを調達した際に、みんな電力は価格面で他社に劣ったが他の項目が優れ、最も高得点だった、と言うことで選定されました。各項目の配点がどの様なものか、気になるところです。

評価項目 | 評価基準 |
価格 | 低価格だと高得点 |
追加性 | 稼働年数が若いと高得点 |
再エネ種類 | 環境負荷が低いものだと高得点 |
近接性 | 発電所と購入事業所が近いと高得点 |
電源構成 | 電気自体も再エネだと高得点 |
小売電気業者の評価 | 直近のCDP気候変動スコアがA-以上で得点 |
発電事業者の評価 | 直近のCDP気候変動スコアがA-以上で得点 |
地元出資比率 | 比率が高いと高得点 |
その他の地元貢献 | 地元への寄付、雇用創出などを定性評価 |
本社建物向けにみんな電力(現UPDATER)から調達した再エネは以下の通りです。
発電所 | 設置場所 | 出力 | 概要 |
峰浜風力発電所 | 秋田県 | 4.9MW | 地元企業が約6割出資 |
潟上風力発電所 | 秋田県 | 66MW | 地元企業が51%出資ウェンティ・ジャパン 51.0%、三菱商事パワー 43.9%、シーテック5.1% |
野馬土太陽光発電所 | 福島県 | ・地元企業が100%出資・収益を県内の農業復興などの資金に充てる |
峰浜風力発電所は当初、横浜市内の6事業者に供給することになっていた様なので、途中でどこかが抜け、リコーが供給先として入ることになったのかもしれません。

潟上風力発電所は規模が大きいため需要家はリコー以外に何社かに分かれているものと思われます(or 残りはFIT買取か?)。
これらはFIT特定卸契約による供給の様です。そのため、卸市場が高騰した場合に価格が高騰するリスクがあります。また発電所はFIT制度を活用して建設されたためリコーが発電所の新設に貢献したのかと言うとそうではありません。リコーの評価制度の項目である’追加性’は稼働年数の新しさを求めていますが、自社が新設に貢献したかと言う点が含まれても良いかもしれません。
今回の営農型太陽光発電は非FITであり、最初からリコーが電気を購入するためにリコーが新設に貢献したと言って良いかと思います。
設置場所 | 福島県福島市在庭坂 |
発電事業者 | 二本松ご当地エネルギーをみんなで考える株式会社 |
小売電気事業者 | UPDATER(みんな電力) |
発電所種別 | 非FIT営農型太陽光 |
発電開始予定 | 2025年5月 |
発電容量 | DC 164.2kW,AC 99.0kW |
営農 | 牧草を栽培し、牛を放牧 |
その他 | ・PPA期間 : 非公表・可動式架台型太陽光パネル・垂直設置型太陽光パネル |
リコーは2021年度の時点で本社での実質再エネ100%化を達成していますが、電力小売りの再エネメニューを選択したと言う取り組みかと思います。今回はPPA契約を締結しており、市場高騰リスクの回避と言う面もあるかとは思いますが、踏み込んだ取り組みと言えるかと思います。
また価格だけで再エネを評価するのではないと言う点も注目されます。ただ、自社でルールを設定してそれに沿って再エネを調達する企業は一部の先進企業に限られると思われるため、大きな流れにするためには地産地消、再エネの新設への貢献が評価される公的 or それに準じた仕組みが必要かと思います。どの様な仕組みが良いのか、引き続き考えて行きたいと思います。