大規模な太陽光発電の適地が減少する中で小規模な太陽光発電、特に50kW未満の低圧太陽光発電が注目されて来ています。需要家にとって低圧太陽光発電から電気を調達するとはどう言うことかを考えて行きたいと思います。
そもそも低圧太陽光発電とは何か
まずは低圧太陽光発電所とはどの様なものかから見て行きたいと思います。低圧太陽光発電は出力は50kW未満で、高圧では電気主任技術者を選任する必要があるのに対し、低圧では選任が不要です。そのため、以前は高圧太陽光発電所が設置出来る土地を分割して低圧太陽光発電にすると言うことが起きていましたが、現在では出来ない様になっています。
以前は低圧太陽光発電を規制する法律があまりなかったため事業者の自主性に任せる、ある意味、「野放し」とも呼べる状況にありましたが、2023年3月20日から「小規模事業用電気工作物」として規制が入る様になりました。
低圧も以下が求められる様になり、しっかりした設備設置、管理が求められる様になっています。
①技術基準適合維持義務 ②基礎情報の届出 ③使用前自己確認の届出
小規模事業用電気工作物 https://shoushutsuryoku-saiene-hoan.go.jp
地域活用要件
低圧太陽光発電に関してもう一つ別の観点としては再エネの自立に向けて「競争電源」と「地域活用電源」に分けて考えることになり、低圧太陽光発電は地域活用電源に位置づけられました。低圧は地域活用要件として自家消費型にFITを適用することとなり、30%の自家消費、災害時に給電用コンセントを提供することが必要になりました。一方、営農型太陽光発電に関しては自家消費を行わなくても災害時に活用出来ればこの自家消費は求められませんでした。
それまで農地を転用して低圧野立て太陽光を設置することが多かったと思いますが、電力需要が限定される農地で自家消費30%を行うのは難しいため低圧太陽光のFIT認定がそれまで2018年度 56,058件、2019年度 44,782件と言う水準だったのが、2020年度 5,371件、2021年度 4,981件と急減しています。
営農型では自家消費要件がないため営農型を始めた事業者も増える様になり、きちんと営農を行わない事例も増えてしまったとも言われています。
FIT制度における地域活用要件についてhttps://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/community/dl/20220316_fit.pdf
説明会等要件
2024年度から施行された説明会等要件に関して低圧は以下に該当しない場合は説明会の開催は義務ではなく、ポスティング等の方法で事前周知することになります。
1)林地開発許可、盛土規制法等、認定申請要件許認可の対象エリア 2)土砂災害警戒区域(土砂災害特別警戒区域を含む。)又は土石流危険渓流 3)条例で 自然環境・景観の保護を目的として、保護エリア
ただ、100mの範囲に同じ事業者が複数の低圧太陽光発電所を持つ場合は説明会の開催が必要になります。
説明会の開催要件につきより厳しい条例もあるため再エネ特措法の説明会開催用件だけでなく、条例も確認する必要があります。
説明会及び事前周知措置実施ガイドラインhttps://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/kaitori/dl/announce/20240220_setsumeikai.pdf
再エネ電気の調達電源としての低圧太陽光発電
低圧太陽光発電からの電気の調達ではまず新設と既設の2つがあります。現状、事例として増えて来ているのは新設の方です。
例えば東京海上日動は低圧太陽光発電30箇所から所有する施設へ電気を調達することを決めた様です。そのリリースによると「複数の太陽光発電所の立地を分散させることで、自然災害や電力系統のトラブル等のリスクを分散・回避し、発電された再エネ電力をより安定的に供給できる形態」と考えている様です。
東京海上日動、3施設にオフサイトPPA、低圧太陽光30カ所新設https://project.nikkeibp.co.jp/ms/atcl/19/news/00001/04423/?ST=msb
オフサイトフィジカルコーポレート PPA の活用による再生可能エネルギー由来の電力の導入についてhttps://www.tokiomarine-nichido.co.jp/company/release/pdf/240827_01.pdf
リリースにも「追加性のある再生可能エネルギー由来の電力」とありますが、既設と異なり、これから新しく出来る発電所なので、追加性を求めるRE100の要件も満たせることもポイントかと思います。
数十から数百か所の低圧太陽光発電所から電気を調達することになるので、太陽光発電所の管理、発電量予測を始めとした発電計画提出、インバランス対応等が求められることになります。如何に効率よくそれら業務を行うかがポイントになるかと思いますが、需要家としてはそう言った業務をしっかり行える事業者と組むと言うことかと思います。
また数十から数百か所の低圧太陽光発電所になるため地域とトラブルになっていないかと言うことも重要なポイントになると思います。地域で問題視されている低圧太陽光発電所からの電気を購入していると言うことはレピュテーションリスクにつながるかと思います。