最近、需要家が再エネ関連子会社を設立する動きがありますが、今回は無印良品を展開する良品計画の再エネ発電事業会社設立の動きを見てみます。
(良品計画の脱炭素の目標)
- GHG排出量 : スコープ1+2 75,194 CO2-t (2024.8月期)
- 2030 年までに自社のスコープ1, 2の温室効果ガス排出量 2021 年比 50%削減
- 2030年までに店舗での再エネ100%、自社店舗設備太陽光100%設置
再エネ発電事業会社設立
需要家が再エネを調達する場合、電力小売事業者の再エネメニューを選択する、非化石証書を調達する、PPA契約を締結する、自分で発電所を保有するなど様々な方法があります。良品企画も単独店舗では再エネメニューの選択、太陽光パネルの設置を行ってきた様です。
ただ、テナントとして入居している場合はオーナー等により使える電力が決められていることも多く、その場合に脱炭素を進める場合は環境価値を調達することになります。今回の発表もバーチャルPPAで環境価値を調達するものです。
需要家は電力小売、発電事業者とバーチャルPPAの契約を結ぶ形が多いですが、良品計画では自らが再エネ発電事業者になることが特徴です。良品計画が80%、JERAが20%出資する合同会社MUJI ENERGYが発電事業者となり、電気と環境価値をJERA Crossに販売し、電気は市場で売却し、環境価値は良品計画が購入する様です。
・合同会社MUJI ENERGY
・設立 : 2025.9 (予定)
・初年度 : 太陽光発電 13MW ・・良品計画の年間電力使用量の20%相当
2030年度までのCO2削減必要量に相当する太陽光発電 60MW
良品計画とJERAが再生可能エネルギー発電事業会社「MUJI ENERGY」設立を合意
2025.6.25
https://www.ryohin-keikaku.jp/news/pdf/20250625_MUJI_ENERGY.pdf
なぜ発電事業に?
元々発電事業者ではなく、発電所開発の知見も少ないと思われる良品計画がなぜ発電事業にまで踏み込むのでしょうか。
リリースには’発電設備周辺の自然環境や住民への影響に充分に配慮した設備用地の選定を実現するために、発電事業を行う会社を設立することとしました’、と出ています。無印計画の事業戦略を考えると発電事業会社の設立は自然な流れの様に思えます。
統合レポートに事業戦略として以下が記されています。
「良品計画の事業戦略は、ESG戦略と表裏一体です。「感じ良い暮らしと社会」の実現に向けて、4つの重要課題を軸とした商品、サービス、事業活動を展開しています。」
統合レポート MUJI REPORT 2024(2024年8月期) https://www.ryohin-keikaku.jp/sustainability/pdf/MUJI_REPORT_2024_J.pdf
4つの重要課題として最初に挙げられている2つは「資源循環型・自然共生型・持続可能な社会の実現」「土着化による地域課題解決と地域活性化の実現」です。自然共生型、地域課題解決を考えると、発電所の開発も人任せにせず、自分たちで積極的に関与して行こうと言うことかと思います。
発電事業者会社設立のリリースでも、耕作放棄地等を活用した発電所の建設、営農型太陽光発電などによる雇用や生産面での地域社会への貢献を目指す、と書かれています。耕作放棄地を活用することにより、自然共生型の発電所としたり、営農型太陽光により、営農者の減少を防ぐことを考えているのだと思います。
無印ならではの取り組みに
営農型太陽光発電の場合、下部農地で作った農作物をどの様に販売していくかも課題となりますが、野菜や加工食品も扱っている無印計画であれば農作物の販売も一緒に考えられます。
農作物については無印計画のプリンセスサリーの取り組みが参考になります。高齢化やお米の価格向上といった課題に取り組むために2022年から地域生産者とともにプリンセスサリーの栽培を始めた様です。
千葉県産プリンセスサリー先行予約販売を始めました
https://www.muji.com/jp/ja/special-feature/other/shokoku/princess-sally/
直近の米騒動によってそれまでの生産者が栽培を中止すると言う想定外の事態も発生してはいるものの、今年度も生産者を見つけ、予約販売を行った様です。
令和の米騒動でピンチ
https://www.tv-tokyo.co.jp/plus/business/entry/202505/16936.html
再エネに対しての地域の目が厳しくなって来ている中、地域に受け入れらえる再エネとはどの様なものか、問われていますが、電気の需要家としての良品計画の動きはそれに一つのモデルを提示する可能性があるものとして今後も注目して行きたいと思います。
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