LDES(長期エネルギー貯蔵システム)と言う言葉を見かけることが増えて来ました。このLDESの可能性をどう考えると良いでしょうか。
LDESとは
LDESは文字通り長期的にエネルギーを貯めることが出来るもののことを言い、リチウムイオン電池以外のものを差すことが多いかと思います。長期的とはどの程度の時間を意味するのか決まった定義はないと思いますが、LDES Councilのサイトには8時間以上と言った記述もあります。リチウムイオン電池も長く貯められるものもありますが、比較的4時間位までのものが多いところからもリチウムイオン電池とは異なるカテゴリーと考えると良いのではと思います。
LDES Council
https://www.ldescouncil.com/about/
なぜLDESなのか
LDESが必要になるのはどの様な状況かと言うと、マッキンゼーの資料では変動性再エネの導入比率が50%を超えるとLDESの重要性が高まると出ています。日本での再エネは2030年度の目標でも36-38%で50%を超えるのはもっと先と思われるので、本格導入まではもう少し時間が掛かりそうです。
定置用蓄電システム普及拡大検討会 2024.11.11 https://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/storage_system/pdf/2024_004_04_02.pdf
ドイツでは太陽が照らず、風が吹かないので太陽光発電、風力発電の発電量が低下する時期のことをDunkelflaute(暗い凪)と言う様です。その様な状態が48時間続くケースは、年間を通じて平均2回あるとのことなので、年間100-200時間は太陽光発電、風力発電以外で何とかしのぐ必要があり、これまでは火力発電に頼っていた様です。
ソーラージャーナル https://solarjournal.jp/news/56870
今後は脱炭素のことを考えると火力ばかりに頼れないと言うことでLDESの活躍が期待されています。ドイツでは年間100-200時間と言うことですが、日本ではどの位の時間をしのぐ必要があるかは興味深いところです。
需要家にとってのLDESとは
需要家、特に工場にとってのLDESはどの様な意味を持つでしょうか。先ほどのマッキンゼーの資料ではLDESを電気を供給する場合と熱を供給する場合に分けています。
電気を供給する場合、長い時間、電気を貯められると言うことでは大型の太陽光発電を設置出来る場所であれば使い切れない電気をLDESに貯めると言うことで価値を発揮出来ることも出て来るでしょう。ただ、日中に使い切れない程、発電出来る太陽光発電を設置出来る工場は多くはないのではないかと思います。
工場の場合はむしろ熱を貯めると言う意味でのLDESが今後の注目ポイントではないかと思います。電気を熱に変えて貯め、必要な時に使うと言うことが出来ると工場の脱炭素に近づけるかと思います。これについては今後、深掘りして行きたいと思います。
現状は
LDESのコストは一部リチウムイオン電池よりも安価に出来るものもある様ですが、リチウムイオン電池のコストが大幅に下がっているのでリチウムイオン電池より高い状況にある様です。LDESは普及期に入ったらリチウムイオン電池より、かなり安く出来る可能性があると言うのも魅力の一つですが、まだそこに至るまでには時間が掛かりそうです。
Long-duration storage ‘increasingly competitive but unlikely to match Li-ion’s cost reductions’ https://www.energy-storage.news/long-duration-storage-increasingly-competitive-but-unlikely-to-match-li-ions-cost-reductions
今年度の長期脱炭素電源オークションの募集要項には蓄電池に6時間以上と言うカテゴリーが出来ました。結果発表は来年度ですが、どの様なLDESが落札するのか興味深いところです。
長期脱炭素電源オークション募集要綱 (応札年度:2024年度)https://www.occto.or.jp/market-board/market/jitsujukyukanren/files/240904_boshuyoukou_long_2024.pdf
技術的な検証が必要なものもあり、まだ本格的な普及にまで時間が掛かりそうなLDESですが、脱炭素の実現には重要な役割を果たすものと思われますので引き続きフォローしたいと思います。