日本の再エネは高いのか

外資系企業を中心に海外では再エネが一番安くなっているのに日本では安くないのはなぜかと言うお話を聞きます。今回は日本での再エネの価格について見ていきたいと思います。

再エネの安さを言う場合に2つ考える必要があります。
①他の電源と比べて再エネが相対的に安いか
②他の国と比べて再エネが安いか

①他の電源と比べて再エネが相対的に安いか

すでに太陽光発電は新設で見た場合に最もコストが低い電源になっています。既設のコストではないため今、稼働している発電所のコスト比較ではない点は注意が必要ですが、今後の発電所設置を考える場合に参考になるかと思います。

モデルプラント方式の2023年の発電コスト

太陽光発電(事業用)陸上風力原子力LNG (専焼)石炭(専焼)
LCOE(円/kWh)10.916.312.6~19.124.8

https://www.enecho.meti.go.jp/category/others/basic_plan/pdf/20250218_03.pdf

今後、カーボンプライスが本格的に導入されるに伴い、CO2を排出するLNG、石炭等は更にコストが増加するものと思われます。

上記から他の電源と比べると少なくとも太陽光は最も安い電源になっています。

②他の国と比べて再エネが安いか

アメリカでの太陽光発電のLCOEは$38-78/MWhです。1$=150円で計算すると5.7-11.7円/kWhになり、低い方を取ると日本の半分近くになっており、確かに日本の太陽光はアメリカに比べて高いとも言えます。もちろん、こう言った計算の場合、条件設定によって結果が変わるため詳細に見て行く必要がありますが、傾向としては日本が高いとは言えるかと思います。

Lazard Releases 2025 Levelized Cost of Energy+ Report
NEW YORK, June 16, 2025 – Lazard Inc. (NYSE: LAZ) is proud to announce the release of the 18th edition of its Levelized ...

なぜ高いのか

なぜ海外に比べると日本の再エネが高くなるのか、少し前のデータですが見て行きたいと思います。

(工事費)

JPEAの2022年の調査によると日本とドイツの比較で最も大きかったのは工事費です。

以前は日本の人件費が高いからと言う説明が通用したかと思いますが、最近では先進国を中心とした海外と比べると安くなっているのでこれは理由になりません。

調査では以下が示されていました。

  • 日本では多重下請け構造になっておりノウハウの無い2次3次下請け業者による施工が実施される
  • 日雇い労働者(高齢者も多い)に任せることも多く作業効率が悪い
  • 日本ではバックホーを使用するケースが多く、PV専用のラミング杭打機と比べると効率が悪い
  • 架台組立・パネル組立のマニュアルは無く、日雇い労働者に対するトレーニングもなされない
  • 日本では2-3倍の工期が必要となる

https://www.jpea.gr.jp/wp-content/uploads/JPEA_report220225.pdf

日本では個々人の人件費が低くても多重下請け構造になっているため積み重なるとコスト高になり、工事業者の専門性が低く、工期も長いと言うことになります。

(許認可)

ドイツでは「都市計画上で生産性の悪いもしくは未利用地の農地・耕作地が定められておりEIAは原則不要」とのことです。都市計画がはっきりしているため使える土地がはっきりしていると言うことかと思います。一方で日本ではゾーニングを行って再エネが設置出来る場所を確認している自治体はまだまだ少ないかと思います。

ドイツでどこまで細かくゾーニングがされているのかは確認する必要があるかと思いますが、土地利用可能性の明確化は開発期間、つまりはコストに影響がある項目かと思います。

(系統接続)

ドイツでの系統接続検討の期間は分かりませんが、日本では受付から回答まで3カ月と言う標準期間が定められています。OCCTOの報告では2024年度の接続検討の件数、11,732件のうち、3カ月を超過したのが40件と0.3%です。ほとんどが決められた3カ月内に回答されていると言うことになります。ただ、これはあくまで受付からの期間と言うことで実際には受付までに時間が掛かっているものもある様です。期間の報告の起点が受付のため受付までに期間が掛かっているものはそもそも報告に含まれていません。書類の不備のため受付出来ない状況のものもあるかと思いますので難しいですが、接続検討依頼を受け取ってから回答までの期間もデータとしては欲しいところです。

発電設備等系統アクセス業務に係る情報の取りまとめhttps://www.occto.or.jp/houkokusho/2025/files/250620_access_toukei_2024.pdf

(託送料)

小売単価24.1円/kWhの内、託送料は7.2円、約30%と少なからぬ割合を占めています。

老朽化する系統設備の維持・更新コストをどの様に抑えて行くのか、も小売価格の低減に大きな影響があります。

JPEA太陽光発電の概況と上下水道事業における導入への期待 2024.7.18 https://www.env.go.jp/content/000238803.pdf

(O&M)

O&MコストもLCOEの25%程度を占める大きな項目です。欧米では日本の様な電気主任技術者制度がないと聞きます。設備の維持には保守点検が必要になることは言うまでもないですが、発電所まで2時間で駆けつける必要がある2時間ルールなどより良い制度に向けた検討が必要かと思います。

コスト高については日本のこれまでの歴史に根差す面があるためこれを行えば下がると簡単に言える訳ではないかと思います。一方で脱炭素の実現には今の数倍の再エネを導入していく必要があります。その場合、産業競争力を考えると他の国より割高な再エネではいけません。仕組みの簡素化、専門事業者の育成などコスト低減の可能性を今一度検討していく必要がある様に思います。

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