太陽光発電において4/1から長期安定適格太陽光発電事業者(以下適格事業者)制度が開始されているので見てみたいと思います。
長期安定適格太陽光発電事業者制度
2012年にFIT制度が導入されたことで特に太陽光発電への参入が大幅に増加しています。ただ、電気と言うインフラを担う覚悟で参入したと言うよりも金融商品としての魅力を感じて参入している場合も少なくなく、そう言った事業者が買取制度がなくなり、免除されていた義務を履行しなければならない卒FIT後に発電を継続するかは分かりません。発電が可能なのに市場退出してしまう発電所を長期安定的に運用できる事業者に集約し、長期安定電源化して行く必要があることから、この長期安定適格太陽光発電事業者制度が出来ました。
適格事業者の要件
この適格事業者に認定されるための要件は以下3つです。
①地域の信頼を得られる責任ある主体であること
②長期安定的な事業の実施が見込まれること
③FIT/FIP制度によらない事業実施が可能であること
①地域の信頼を得られる責任ある主体であること
・関係法令を遵守
・上場企業 or 上場企業の100%子会社 or 地方自治体が出資
・地域との共生や保安の確保に関する取組方針について、自社HPに記載すること
②長期安定的な事業の実施が見込まれること
・低圧、高圧、特高の規模別に集約する容量、期間を決め、中期経営計画等で公表。少なくとも低圧は コミット。毎年進捗状況を評価してHPで公表。
③FIT/FIP制度によらない事業実施が可能であること
・2017年以降に認定されたFIT/FIP太陽光とNon-FIT/FIP太陽光の稼働済み案件を50MW以上 保有していること。
適格事業者のメリット
適格事業者に認定された場合のメリットは以下4点ですが主には①②かと思います。
①FIT/FIP変更認定時の説明会等の取扱い ②電気主任技術者に係る統括制度の利用拡大 ③パネル増設等時における廃棄等費用の積立時期の取扱い ④事業売却希望者情報の先行公開
①FIT/FIP変更認定時の説明会等の取扱い 事業譲渡を受けたりなどで再エネ発電事業計画の重要な事項を変更する場合、通常であれば説明会を開催する必要がありますが、適格事業者であれば説明会ではなく、ポスティングなどの事前周知措置でOKです(発電所を新設する場合は説明会が必要)。ただ、林地開発許可が必要なエリア等周辺地域に影響を及ぼす可能性が高いエリアにある場合は説明会が必要になります。注意が必要なエリアに設置されているとはいえ、すでに稼働済みの発電所のため住民の方にとって説明会まで必要かは難しいところです。ある程度の規模の発電所であれば林地開発許可を取得しているかと思いますのでこの要件があることで適格事業者のメリットが少なくなります。
②電気主任技術者に係る統括制度の利用拡大 電気主任技術者は2時間以内に発電所に駆けつける必要がある、いあわゆる2時間ルールを満たさないと行けないですが、統括制度統括制度を使えば電気主任技師が複数の事業場を管理することで、電気主任技術者が2時間で駆けつけるのではなく、担当技術者が2時間以内に駆けつければ良いことになります。
ただ、この統括制度が使えるのは設置者が同じ発電所に限定されます。適格事業者に認定されると設置者が適格事業者やその密接関係者である事業場でも統括制度が使える様になります。同一グループの発電所の保守管理が行いやすくなるメリットがあります。
気になる点
発電所の集約を担う組織として地域で活動する企業が候補になりますが、たとえ自治体が出資していたとしても50MWと言う要件を満たせる企業はあまりないと思われます。今後こう言った地域で活動する企業をどの様に認定していくかと言うのは課題かと思います。
また元々適格事業者制度は発電所を長期安定電源化して行くことを狙ったものですが、集約する発電所の容量、期限は事業者に任されています。計画の評価を毎年実施し、公表すると言うことですが、どこまで集約化が進むのかは注視して行きたいと思います。
適格事業者の産業界への影響
適格事業者制度が産業分野にどの様な影響を与えるでしょうか。
・PPAなどで電気を購入する場合の信頼性 PPAなどで長期の電力購入契約を結ぶ場合、地域共生をしっかりしている信頼出来る事業者であると言うことが分かるのは良いことかと思います。地域で問題を起こしている発電所から電気を購入していると需要家のレピュテーションに悪い影響を与える可能性があります。
・統括制度利用によるコスト削減 統括制度を利用しているグループから電力を購入する場合、電気主任技術者の選任が少なく済むと言うことでコスト削減余地が見込まれます。
・集約化による信頼できる供給力のアップ 今後ますます再エネへのニーズが高まって行きますが、卒FITで市場退出が起きてしまうと再エネ調達にも影響が出ます。適格事業者が集約化することで再エネの量を維持することが出来ます。
適格事業者制度はまだ出来たばかりで初年度何社が認定されるのかわかりません。今後の再エネの長期安定電源化への貢献を期待したいと思います。
(関連記事)