適格事業者制度にも認定事業者のメリットとして出て来た説明会制度について見て行きたいと思います。
説明会制度
開発時等において地域としっかりコミュニケーションが取れていない案件が出て来たために2024年4月から再エネ特措法において説明会制度が開始されました。FIT/FIPの新規申請前や発電所を第三者に譲渡する場合等に説明会をきちんと開催する必要があります。
従来からきちんとした事業者は住民等への説明をしっかり行って来ていたと思いますが、制度として制定されたことは地域に受け入れられる発電所が益々重要になる中で大きな一歩かと思います。一方で制度が始まったばかりと言うこともあり、事業者での理解が不十分で説明会のやり直しとなることも少なくない様です。
2025年度の改正
1年間の制度運用実績を経て2025年4月に制度の一部改正がありました。
説明会及び事前周知措置実施ガイドラインhttps://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/kaitori/dl/fit_2017/legal/guideline_setsumeikai.pdf
(改正例)
・周辺地域の住民がおらず、エネ庁のホームページに開催案内を掲載しても開催の前々日まで隣接する土地/建物の所有者から参加連絡がなかった場合、説明会の開催が不要になる。
・以下の場合、申請まで3カ月の期間を置く必要がない。
・開催した説明会に参加者がいなかった場合
・再説明会で参加者がおらず、意見・質問も出なかった場合
審議会での検討 : 大量導入小委 2025.2.3 https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/saisei_kano/pdf/072_01_00.pdf
それまでは周辺地域の住民がいなくても隣接する土地/建物の所有者がエネ庁のホームページを見て参加する可能性があったため説明会を開催し、誰も参加者がいなかったことを確認する必要がありました。それから考えると説明会の開催が不要になることは良いことかと思いますが、開催不要の判断を開催直前の前々日まで待つ必要があるのは今後の改善点かと思います。
また、関係法令遵守状況として’その手続の要否’を説明項目に入れないと行けないですが、今回のガイドラインには’その手続による許認可等の取得が不要である場合も、その旨を説明すること’と言う文言が追加されています。これは取得が必要な許認可だけを説明し、取得が不要な許認可について触れていないと指摘を受けた事例が少なくなかったためと思われます。
住民の方には取得が必要な手続きのみを説明すれば良いと考えがちですが、よく見ると’その手続の要否’と記載されていて不要な場合も説明する必要があると記載されています。この様にガイドライン等も良く読み込んで対応する必要があります。
説明会制度の産業界への影響
この説明会制度が産業界にどの様な影響があるでしょうか。
レピュテーションリスクの低減 PPAで電力を調達する場合、発電所を自ら開発したり、譲渡を受ける場合、その発電所が地域に受け入れられているかは重要なポイントになります。住民から継続して反対されている発電所から電気を購入したり、発電所を保有することはレピュテーションリスクにつながります。説明会がきちんと行われていればそうしたリスクを低減することが出来ます。
手続き遅延の恐れ FIPでの電力調達の場合、認定申請の3カ月前までに発電事業者が説明会を行っておく必要があります。また落札後、地方経産局で事業計画が審査されますが、もし説明会の実施に不備があり、再説明会が必要になった場合、認定取得期限に手続きが間に合わない可能性があります。万一、間に合わなければ翌年、再度入札からやり直す必要が出て来て再エネ調達に支障が出ます。
非FIT/非FIPでも 今回の説明会制度はあくまでも再エネ特措法内でのものになります。非FIT/非FIPの発電所は対象外ですが、だからと言って説明会が不要と言う訳ではありません。各自治体の条例で説明会が規定されている場合もありますが、条例がない場合でも地域の方への説明は欠かせないと思います。再エネ特措法で定められている説明会と全く同じ条件で開催する必要はないかと思いますが、参考にしながら地域とのコミュニケーションを実施出来ればと思います。
地域共生を進める上で説明会は重要な制度ですが、発電事業者に与える影響は大きく、より良いあり方に向け、今後も継続的な見直しが必要かと思います。引き続き動向をフォローしたいと思います。
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