低圧太陽光発電所からの電気の調達をどう考えるか②

もう一つのモデルは複数の既設の低圧太陽光発電所から電気を調達すると言うものです。FIT制度開始後に導入された低圧太陽光発電所は65万件以上と膨大な件数になっています。

複数の既設低圧太陽光発電所を束ねる場合の課題

これらの既設の低圧を複数集めてそれらの電気を使おうと考える場合、個々の発電所で開発事業者が異なる場合が多いため、発電所の品質も様々で新設よりもハードルが高くなります。

政府の審議会では2032年以降の卒FIT時に、これまで免除されていた同時同量の義務を課されたり、FIT時と異なり、売電単価が低く収益性も低くなることを懸念する低圧太陽光発電所の所有者が発電を行わなくなるのではと懸念していて発電所を優良な事業者に集約する話も議論されています。そこで議論されている課題等が複数の既設の低圧太陽光を束ねて電気を使おうと考える場合にも当てはまるかと思います。

大量導入小委  2024.3.27  資料2 https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/saisei_kano/pdf/061_02_00.pdf

低圧太陽光発電所自体は小規模なため高圧や特高の発電所と異なり、一つ一つの発電所を精査するためのデューデリジェンス(D/D)にコストを掛けることが出来ません。一方で個々の発電所の開発事業者が様々な場合、本来的にはしっかりしたD/Dを行う必要があります。

コストを掛けずにD/Dを行うためにあらかじめ発電所に格付けがされていると簡易なD/Dで済む可能性があります。個別の企業でこう言った格付けサービスを行い始めていますが、現在、公的なものやデファクト的なものがある訳ではありません。

RE100の要件として稼働から15年の発電所からの電気を調達すると言う15年ルールがありますが、既設の場合、今後、稼働から15年を超えていたり、超えずとも15年まで時間が限定されていたりする場合に対象とならないと判断せざるを得ない場合が出て来ると思います。リパワリングから15年と言う要件もあるためリパワリングを行えばこのルールを回避出来るかと思いますが、どの程度までのリパワリングであれば認められるかは分かりません。

既設低圧集約の例

既設低圧太陽光発電の集約の例としてよく取り上げられているのは山梨県の百年ソーラー山梨の事例です。低圧を集約する会社として山梨県、山梨中央銀行、三菱UFJ信託銀行、

ヒラソル・エナジーが出資して出来たものです。これまで18件、1MWを集約したとのことでこのモデルを他の地域で広げていくことを考えている様です。ここでもFIT終了後にどの様に発電所を活用していくかと言うのが課題に挙げられています。現状はFITのために電気の販売先を考える必要はありませんが、卒FITになると誰に引き取って貰うかを考えないと行けないと言うことかと思います。山梨の需要家が引き取ることになるのが理想かとは思いますが。

大量導入小委 2024.7.25 資料5 全国銀行協会https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/saisei_kano/pdf/065_05_00.pdf

また、優良事業者への集約を促進するために「長期安定適格太陽光発電事業者」と言う認定制度の案が出て来ています。これに認定されるには低圧の集約をコミットする必要があります。元々は低圧、高圧、特高と言う規模別に定量的な目標のコミットメントを行うと言うもので、必ずしも低圧の集約のコミットが必須条件ではありませんでした。ただ、2024.10.22の審議会での委員のコメントから、11.28の審議会では低圧の集約のコミットを必須化する案が示されました。

大量導入小委 2024.10.22  資料3 https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/saisei_kano/pdf/070_03_00.pdf

大量導入小委 2024.11.28  資料3 https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/saisei_kano/pdf/071_03_00.pdf

既設低圧太陽光発電所集約の本当の課題とは

大手発電事業者で上場していて低圧の集約を行っていたり、行おうと考えているところはかなり限定されるかと思います。認定されることで得られる説明会等要件の緩和をはじめとしたメリットとの比較になるかと思います。仮に既設低圧の集約を行おうと考えていたとしてもあくまで優良な低圧の案件だけであって、課題を抱えた低圧は集約の対象にはならないと思います。

また先ほどの百年ソーラー山梨でもあくまで集約の対象になるのは優良なものか、少し手を加えたら優良案件になるものであって、課題を抱えた低圧は対象にはならないものと思われます。需要家としても課題を抱えたままの低圧から発電された電気を引き取ることはリスクがあるため対象外になるかと思います。

低圧太陽光発電の課題を突き詰めれば課題を抱えた数万件 or 数十万件の発電所を卒FIT後にどうするか、と言うことになると思います。この点についてはまだこれからの議論が必要かと思います。

需要家にとってはまずは新設の低圧太陽光発電所を束ねるモデルから検討をはじめ、その検討がひと段落ついたら既設の低圧を束ねるモデルも検討の俎上に乗せる時期が来ると言うことかもしれません。

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