工場の脱炭素について最近のニュースを取り上げてみたいと思います。今年8月7日に日本製紙が八代工場で新聞用紙を生産しているN2抄紙機を2025年6月末を目途に停機すると発表しました。
日本製紙グループの生産体制再編成についてhttps://www.nipponpapergroup.com/news/year/2024/news240807005727.html
また同時に石炭専焼の9号ボイラーを停機することで八代工場での石炭使用量をゼロとするとも発表しました。
N2抄紙機は八代工場に4つある抄紙機の日産能力の半分近くを占めますし、9号ボイラーも八代工場のボイラー蒸発能力876t/hの内、半分の440t/hを占めるので、N2抄紙機を止めるので9号ボイラーも止めると言うことかと思います。
紙パ技術誌 2004.2 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jtappij/58/2/58_2_257/_pdf
また9号ボイラーが正炭専焼だと言うこともボイラーを停機する背景にはあるかと思います。JERAが石炭火力発電所にアンモニアを混焼する試験を行いましたが、この碧南火力発電所4号機は100万kWで2001年稼働です。一方、9号ボイラーは1993年稼働で、対になるタービンは7.5万kWです。新しい技術と言うこともありますが、アンモニア混焼に改造すると言う選択肢はなかったかと思います。
JERA碧南火力発電所における燃料アンモニア転換実証試験を開始 ―世界初となる大型の商用石炭火力発電機でのアンモニア20%転換の実証― https://www.jera.co.jp/news/information/20240401_1863
10月8日の電気新聞によると、電気の他社購入量が従来の17%から68%に増加する様です。タービン14.5万kWの内、半分の7.5万kWが止まるので単純計算だと外部からの電気調達量は34%になるはずですが、他のタービンの稼働がそこまで高くなかったので68%外部調達しなければ行けなくなったと言うことかもしれません。
日本製紙・八代工場/操業100年、大変革期に直面https://www.denkishimbun.com/archives/376262
気になるのは電気の調達は外部からだとして熱はどこから調達するのかと言う点、そして2027年度から開始する家庭紙事業で使う設備、必要となるエネルギーはどうなるのかと言う点です。
製紙において熱が重要と思われますが、これまで自社工場内で生み出していた熱を活用していたものと思われるので今後はどの様に調達するのか。
2027年度から開始する家庭紙事業は既存の抄紙機を使うのか、新たな設備投資を行うのか。それによって必要となるエネルギーの調達も変わって来ます。
何を作って行くのか、そのためにはどの様な脱炭素エネルギーを使って行くのか、両方を考えて行く必要があると言う事例かと思います。