工場でのDRをどの様に考えるか

改正省エネ法

従来は需要にあわせて供給を変動させて来ましたが、ITの進化によって供給に需要を合わせることも出来る様になりました。そう言ったデマンドレスポンス(DR)が改正省エネ法で2023年から報告義務が出来ました。報告が負担感のない様にDRの日数と言ったシンプルな内容になっています。

また任意ですが2024年度の実績から高度なDRの報告と言うことでDRの実績値、DRの実施に活用した設備についても報告を求められることになりました。

工場等判断基準WG  2024.6.25 https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/shoene_shinene/sho_energy/kojo_handan/pdf/2024_001_04_00.pdf

工場等がDRを行うことで収入を得るための道としては以下が考えられます。

①容量市場                                         ②需給調整市場                                       ③小売の経済的DR

容量市場

容量市場に発動指令電源として参加する場合、送配電事業者の発動指令に対応することになります。

発動指令電源の要件

・年間12回 ・発動指令 3時間前 ・継続時間  3時間 (土日祝日を除く。9-20時)

2023年度に行われた実需給2027年度メインオークションの結果は発動指令電源は600万kW(3.5%)でした。発動指令電源の上限は全体の4%ですが、応札量が上限に満たなかったため落札率は100%になっています。過去には2021年度に行われた実需給2025年度メインオークションでは落札率は84%(475万kW)で91万kWが落ちました。

容量市場の在り方等に関する検討会 2024.2.28 資料3 https://www.occto.or.jp/iinkai/youryou/kentoukai/2023/files/youryou_kentoukai_53_03.pdf

需給調整市場

需給調整市場で現状DRが参加する主な商品は三次②になるかと思います。4月163.91円/ΔkW・h、5月146.42円、6月85.81円と高値でしたが、量的には限定され、6月は114万ΔkW・hです。需給調整市場は応札量、約定量が未達であることが少なくなく、改善措置が取られている段階のため状況はよく注視して行く必要があります。

三次②要件 応動時間 : 45分、制御時間 : 3時間       

小売の経済DR

小売事業者が例えば卸売市場が高騰した際に需要家にDRを依頼して高騰した電気の調達を避ける様な場合が小売の経済DRです。

①②③は工場を持つ需要家が直接市場等に相対する場合よりも間にアグリゲーターが入る場合が多いのではと思います。例えばエナリスでは2027年度の容量市場での発動指令電源として参加する企業を募集しています。

2027年度 容量市場(発動指令電源)参加企業を募集
https://www.eneres.co.jp/news/20240806.html

上げDR

現状、行われているのは電力が逼迫した時の下げDRが中心ですが、今後は電力が余った時の上げDRも増えて行くのではと思います。電力が余った時は優先給電ルールによる出力抑制と言う再エネ発電事業者等の負担(抑制されても補償なし)によって調整がされていて、下げ調整力は市場では調達されていません。

ただ今後再エネの導入拡大によって出力抑制は増加して行くので再エネ発電事業者等に負担を強いるのではなく、需要家の行動変容により、トータルでコストを下げて行くことが重要かと思います。

上げDRを普及させるには以下が必要ではないかと思います。

・日中が安くなる電気料金 ・上げDR時に基本料金が上がらない仕組みの導入 ・時間帯別排出係数

日中が安くなる電気料金

東京電力でも市場調整30%のベーシックプラン、市場調整なしの市場調整ゼロプラン、市場調整100%の市場価格変動プランの3つのプランを提供しています。ただ、市場調整100%の市場価格変動プランで朝時間、昼時間、晩時間、夜時間と時間帯別に分かれているものの夜時間が安く、それ以外の3つの時間帯の料金は一緒になっていて、昼間時間帯の料金が安くなっている訳ではない様です。

東京電力 特別高圧・高圧のお客さま向けの電気料金プランについてhttps://www.tepco.co.jp/ep/corporate/plan_h/minaoshi_2025plan.html

上げDR時に基本料金が上がらない仕組みの導入

1カ月でも基本料金のベースとなるkWを超えてしまうと今度はその超えたkWをベースに基本料金が計算される様になってしまいます。契約電力を超えて上げDRを行うと基本料金が上がってしまうことになってしまい、電気代の総額が上がる可能性があります。

自家発を利用している場合、自家発補給の特別措置が導入されて、出力抑制時に上げDRを行っても自家発補給の時と同じ基本料金の半額までしかかからない様になりました。系統電力500kW、自家発300kWの時、自家発補給契約で300kWの半分の150kW分の基本料金が減額になり、650kW分の基本料金となりますが、上げDRの時もこの650kW分の基本料金になります。

系統WG  2022.10.20 https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/shoene_shinene/shin_energy/keito_wg/pdf/042_04_00.pdf

ただ、これはあくまで自家発がある場合で、ない場合には基本料金が上がってしまうので上がらない様にする仕組みの導入が待たれます。

時間帯別排出係数

電力料金メニューで日中の電気が安くなったとすると日中の電気をより多く使ったり、貯めたりと言ったことが起きやすくなります。ただ、その場合、排出係数は小売電気事業者のメニュー毎に年間で決まっているので、電気を使うタイミングをずらす、つまり需要をシフトしても排出係数は変わりません。日中の電気は太陽光が中心のため実際の排出係数は低いはずなので実態に合わせて日中の排出係数を下げると、CO2排出量も計算上も少なくなります。電気代とCO2排出量の両方を下げられると上げDRへのインセンティブが大きくなるかと思います。

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