英国のLDES cap and floorスキーム

英国でLDES cap and floorスキームの関門を通過した案件が9月に発表されたので見て行きたいと思います。

Lithium-ion dominates first round of UK LDES cap-and-floor scheme
https://www.energy-storage.news/lithium-ion-dominates-first-round-of-uk-ldes-cap-and-floor-scheme/

LDES Eligibility Assessment Outcome
https://www.ofgem.gov.uk/sites/default/files/2025-09/LDES%20Eligibility%20Assessment%20Outcome.pdf

通過したLDES案件

171の申請のうち、今回通過したのは77(28.7GW)案件。内訳は以下ですが圧倒的にリチウムイオン電池が多いです。

リチウムイオン電池 70.4%, 揚水 16.0%, バナジウムフローバッテリー/亜鉛フローバッテリーのハイブリッド 9.1%,バナジウムフローバッテリー 3.1%、残りCAES、CAES。

プロジェクト数出力 (GW)トラック1のプロジェクト数トラック2のプロジェクト数
リチウムイオン蓄電池4820.2453
揚水54.632
バナジウムフローバッテリー/亜鉛フローバッテリーのハイブリッド 162.6151
バナジウムフローバッテリー50.95
LAESと蓄電池のハイブリッド 20.42
CAES10.11
7728.7716

LAES : 液化空気エネルギー貯蔵、Liquid Air Electricity Storage, CAES : 圧縮空気エネルギー貯蔵、Compressed Air Electricity Storage (CAES)

LDES cap and floorスキーム

cap and floorスキームはレンジを決めておいてそれより市場価格が高くなれば事業者が高い部分を戻し、市場価格より低くなったら補填するもので、一定のレベニューが見込めるため事業者は金融機関から融資を得やすくなります。

Long Duration Electricity Storage: Technical Decision Document
https://www.ofgem.gov.uk/sites/default/files/2025-03/Long%20Duration%20Electricity%20Storage%20Technical%20Decision%20Document.pdf

2023年から議論される様になり、今年の3月に要件が決まり、6月に応募を締め切りました。今回、通過した77案件は今後、cost-benefit analysis (CBA)やproject cost assessmentに進み、2026.2Qに選定結果が発表される予定です。

(要件)
2035年までに2.7- 7.7 GWのLDESの導入が想定されています。仮に大型の蓄電池の導入に4年間かかるとして2035年までの導入となると2031年までには導入が決定していないと行けません。第3回の長期脱炭素電源オークションではLDESを含むカテゴリーでは400MWの選定が計画されています。2031年まで6年間で毎年400MW選定されるとすると、2.4GWになり、英国の今回の導入規模よりも小さくなります。英国のスキームがそれなりの規模であることが分かるかと思います。

25年間、8時間をフルの能力として維持しなければ行けません。第3回の長期脱炭素電源オークションでは20年間、6時間が要件なので少し異なります。

(稼働年)
稼働年はトラック1は2030年、トラック2は2033年です。今回通過した77件の内、71件がトラック1、6件がトラック2でした。

(技術成熟度レベル、TRL(Technology readiness level))
TRL(技術成熟度レベル)の考え方が入っています。ストリーム1は事業化の段階に入っているTRL9であれば100MW min、ストリーム2は実証から事業化に移行するTRL8で50MW min。
ストリーム2にはLiquid Air Electricity Storage (LAES), Compressed Air Electricity Storage (CAES) 、フロー電池などが想定されている様です

第3回脱炭素電源オークションではリチウムイオン電池とLDESは別のカテゴリーとされています。LDESにリチウムイオン電池が含まれる今回の様なケースだとリチウムイオン電池の価格競争力から同電池が大勢を占めると言うことになってしまいやすいものと思われます。

今後も8-10時間と言った時間であればリチウムイオン電池が優位性を持つものと思われます。日、週など長期間のエネルギー貯蔵に価値を見出す制度が出て来ると、LDESにおいてリチウムイオンと異なるものが出て来るのではと思われます。

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