SBTi改訂案の影響

こちらの記事によるとSBTi(科学に基づく目標設定イニシアチブ)で改訂案が出されていてScope2ではこれまでロケーション基準とマーケット基準のどちらかを選べたのが、両方設定していくことになる様です。

科学に基づく目標設定イニシアチブ(SBTi)の基準改訂案が発表 2025.4.1
https://www.renewable-ei.org/activities/column/REupdate/20250401.php

ロケーション基準とマーケット基準

ロケーション基準では地域全体(国、電力管内、系統等)の平均排出係数をもとに排出量を算定し、マーケット基準では使用している電気の種類ごとの排出係数をもとに算定します。

マーケット基準ですと再エネを調達したり、証書を使うことで排出量をゼロにできます。

一方、ロケーション基準では企業の努力が反映されず、その場所に排出係数がひも付きます。

発電部門の排出原単位は、ロケーション基準・マーケット基準ともに2040年までにネットゼロ状態としてCCSは考慮せずに0.009kgCO2/kWhとなる必要がある、と言うことです。

第7次エネルギー基本計画の関連資料(2040年度におけるエネルギー需給の見通し)では2040年の全電源平均排出係数0.03-0.04/kg-CO2/kWhと示されています。

2040年度におけるエネルギー需給の見通しhttps://www.meti.go.jp/press/2024/02/20250218001/20250218001-3.pdf

第7次エネルギー基本計画での排出係数はSBTiが求めるものの2-3倍です。現在はどうかと言うと全国平均係数は0.423kg-CO2/kWhで、第7次エネルギー基本計画の10倍以上、SBTiの 47倍です。脱炭素電源を大幅に拡大させていかないと達成できない目標です。

電気事業者別排出係数 https://policies.env.go.jp/earth/ghg-santeikohyo/files/calc/r07_denki_coefficient_rev.pdf

ロケーションの単位

ロケーション基準ではどの単位で見ることになるか分かりませんが、電力管内毎だとすると現状では各送配電事業者は沖縄電力以外は全国平均係数を使用しています。今後は各送配電事業者毎に計算をして出して行くことが求められそうです。

ロケーションをもう少し細かく、系統単位で見ることになると火力が設置されておらず、太陽光等再エネが連系している系統が有利になると思われます。工場等の設置場所を考える時にその系統の排出係数も判断項目の一つになって行くのかもしれません。

あるいは国単位で見るとすると日本の脱炭素の進展度合いが企業の競争力に大きく影響していくことになります。再エネ等脱炭素電源をどの様に増やして行くのか、その具体策を考え、実行していくことが日本の国力を上げることにつながります。

再エネの発電と電力使用を時間単位でマッチングさせるHourly Matchingは電力に時間と言う概念を追加する動きですが、場所と言う概念を入れるのがロケーション基準かと思います。より細かく実態に合わせて見ていく動きが益々強くなりそうで産業分野にどの様な影響があるのか、引き続き見て行きたいと思います。

(関連記事)

RE100技術要件での15年ルールの緩和

タイトルとURLをコピーしました