日本の蓄熱システムスタートアップであるBlossom Energy社を見てみたいと思います。
Blossom Energy社
同社は日本原子力研究開発機構で研究開発等を行っていた濱本氏がCEOを務める2022年設立の企業で、東京大学で原子核物理の研究を行っていた近岡氏も設立に関わっていた様です。
高温ガス炉の開発を行っていますが、その技術を蓄熱システムにも応用出来るとして蓄熱システムの開発も行っている様です。2024年6月に蓄熱システムのコンセプトモデルを発表しました。
Blossom Energy、蓄熱式ボイラコンセプトモデルを公開
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000004.000137020.html
同社の技術は黒鉛をヒーターで400度まであたためて1400Whの熱をため、窒素ガスを熱媒体にして蒸気を作ると言うものです。貯めることが出来る熱が1400Whと少ないためあくまでコンセプトモデルと言う位置づけで、ちゃんと動くことを示す目的のものと思います。大型のモデルを開発していて2025年5月から温浴施設で実証実験を行う様です(出力1MW)。
濱本氏のブログによると、2024年9月から蓄熱+火力発電のPre-FeasibilityStudyを開始したとのことで、大型発電との組み合わせも考えている様です。ただ、大型発電との組み合わせですと相当大型化を行う必要があるのであくまでF/Sを行っていると言ったところでしょうか。
https://note.com/good_ixora427/n/nc5ac0cd33395
同社は2024年2月にはインキュベイトファンド、アニマルスピリッツ、常石商事、ReGACY Innovation Group、グロービスからプレシリーズAとして3.5億円の資金調達を行っています。高温ガス炉のスタートアップとして評価されたのか、蓄熱システムが評価されたのか or 両方なのかは分かりませんが、ディープテック系スタートアップとしての初期のタイミングで資金調達に成功したことは期待度を表しているかと思います。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000137020.html
黒鉛を蓄熱材に使うスタートアップ
海外で黒鉛を蓄熱材に使っているスタートアップではAntora Energyが先を進んでいるかと思います。同社は2024年2月に$150Mの資金調達をしています
Antora Energy https://www.antora.com
BlackRock, Temasek-led group invest $150 mln in thermal battery maker Antora https://www.reuters.com/sustainability/climate-energy/blackrock-temasek-led-group-invest-150-mln-thermal-battery-maker-antora-2024-02-22
気になる点
一方で少し気になるのは2024年4月に元取締役、元業務委託先の関係者及び2人が実質的に設立した高温ガス炉のスタートアップを訴えていることです。営業秘密の持ち出し、原子力事業から撤退するとの虚偽の情報を潜在顧客、VC等に伝えたことが訴えのベースになっている様です。スタートアップとして事業拡大に集中しなければ行けない時期に訴訟を抱えることは資金、時間等のリソースを考えると避けたいですが、本業に影響がないことを祈りたいものです。
ZettaJoule合同会社および当社元取締役らに対する不正競争防止法に基づく差止等請求訴訟の提起について
https://www.blossom-energy.biz/post/202411151553
日本発の蓄熱システムスタートアップとして今後の動きに注目したいと思います。