ではアンモニアはどうか

水素を日本に持って来る方法としてはアンモニアにして輸送すると言うモデルもあります。
ただコスト的には天然ガスからブルーアンモニアを作ると言うのが現状では一番安い様です。

アンモニアのメリットはこちらによると以下の通りです。
・8.5気圧で容易に液化(液体燃料) : LPGと同様、可搬性に優れる
・肥料・化成品原料としての利用実績・流通網 : スケールアップは必要だが、運用/運搬技術は確立済

各種産業活動における脱炭素に向けたアンモニアを燃料とする小型内燃機関利用技術開発
https://www.env.go.jp/earth/ondanka/cpttv_funds/pdf/case/2024/toyota.pdf

すでに流通していて運用・運搬技術がある点、液化がLPGと類似レベルと言う点は水素と異なる点かと思います。

燃料アンモニア導入官民協議会の中間とりまとめによると発電コストでしか分かりませんが、石炭火力発電に 20%のアンモニア混焼を行った場合の発電価格は 12.9 円/kWh、専焼(アンモニア火力発電)を行った場合には、23.5 円/kWhと言うことで一定程度の競争力を持つとの判断です。

燃料アンモニア導入官民協議会 中間取りまとめ 2021.2
https://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/nenryo_anmonia/pdf/20200208_1.pdf

アンモニアボイラー

石炭火力発電所ではアンモニアを混焼する実証が行われました。

碧南火力発電所における燃料アンモニア転換実証試験の終了について
https://www.jera.co.jp/news/notice/20240626_1954

一方で貫流ボイラーでのアンモニア混焼は三浦工業と中部電力、中部電力ミライズがこれから共同研究を行う様です。

アンモニア混焼小型貫流ボイラの開発に向けた取り組み 2024.5.21
https://www.miuraz.co.jp/news/newsrelease/2024/1553.php

要検討点

先ほどの資料ではアンモニアの課題についても示されていました。特に劇物である点は取り扱いに注意が必要です。

・著しく遅い燃焼速度(難燃性燃料) ・強烈な刺激臭(劇物)

各種産業活動における脱炭素に向けたアンモニアを燃料とする小型内燃機関利用技術開発https://www.env.go.jp/earth/ondanka/cpttv_funds/pdf/case/2024/toyota.pdf

日本では石炭火力にアンモニアを混焼するモデルが中心となると思われるので工場向けはその動向に大きく影響を受けそうです。日本の石炭火力発電事業者がすべて20%アンモニアを混焼すると年間2000万トンのアンモニアが必要になる様です。これは全世界の貿易量に匹敵します。

また、石炭火力にアンモニアを混焼するモデルを日本以外どの国々が追随するのかも気になります。先進国は石炭火力を廃止の方向であるとすれば東南アジアの国々が日本の後に続くでしょうか。仮に日本だけに需要があり、その需要も今後の再エネと蓄電池の導入状況によっては縮小するかもしれないとなると、どこまで投資がついていくかと言うのも気になります。LNGは日本が切り開いた面がありますが、それは他の国々での需要が想定されたと言うのもあるのではと想像します。

すでに流通していて運用・運搬技術があるのは良い点ではあるものの将来どこまでアンモニアが工場で使われる様になるかはまだまだ状況をよく見て行く必要がありそうです。

燃料アンモニア導入官民協議会 中間取りまとめ 2021.2 https://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/nenryo_anmonia/pdf/20200208_1.pdf

タイトルとURLをコピーしました