再エネ or 原子力の二項対立?

第7次エネルギー基本計画では「再生可能エネルギーか原子力かといった二項対立的な議論ではなく、再生可能エネルギーや原子力などの脱炭素電源を最大限活用することが必要不可欠。」と示されました。今回はこれについて見ていきたいと思います。

エネルギー基本計画の概要
https://www.enecho.meti.go.jp/category/others/basic_plan/pdf/20250218_02.pdf

二項対立なのか?

再エネ、特に太陽光と風力は天候により発電量が変動するのに対し、原子力は天候に関わらず、一定の稼働を行う点が異なります。脱炭素電源と言う点では両者は同じですが、原子力の脱炭素電源で安定電源と言う特徴に重なるのは火力発電にCCSをつけたり、水素、アンモニアを使うと言った電源になります。

北海道を例に

では再エネと原子力は二項対立にはなく、補完する電源かと言うとそうとも言い切れません。北海道を見てみましょう。北海道には現在、稼働する原子力がなく、2024年度の再エネの年間出力制御率は0.04%でした。

次世代系統WG 2025.6.27 資料1
https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/saisei_kano/smart_power_grid_wg/pdf/003_01_00.pdf

ところが同じ資料に出ている出力制御の長期見通しでは30%になっています。最小需要日の需給バランスを見ると原子力が168万kW稼働している試算になっています。泊3号機(91.万kW)は2027年、泊1,2号機(各57.9万kW)は2030年代前半の稼働が想定されていますので、長期見通しでは3基とも稼働する想定かと思います。3基の合計は207万kWなので、長期見通しでは80%稼働で想定されていると言うことでしょうか。

この見通しでは揚水・蓄電池が0になっている点が良く分からない点です。北海道には京極
発電所と言う揚水発電所があります。20万kW x 3基で3号機は2033年以降に稼働予定とのことです。
https://www.hepco.co.jp/energy/water_power/kyogoku_ps.html

最小需要日の需給バランスでは再エネ出力制御が387万kWとなっている一方で原子力が168万kWで割合としては43%のため出力制御の発生要因が原子力の稼働のみとは言えないですが、主要な要因の一つとは言えるかと思います。

電源の特徴から再エネと原子力は対立するものではないですが、原子力の再稼働により、再エネの出力抑制が増加すると言う意味では結果的に影響すると言うことかと思います。

出力抑制を減少させる方法として期待されるのは系統用蓄電池や再エネ併設蓄電池かと思います。2025年3月時点での北海道での系統用蓄電池の接続検討申込は941万kWで、接続契約受付が156万kWです。仮に最小需要日に系統用蓄電池156万kWが余剰を充電すると出力制御40%分が吸収されます。これは単純化しすぎていますが、系統用蓄電池が抑制量の低減に小さくない影響を与えると言うことは言えると思います。

次世代系統WG 2025.6.27 資料4 https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/saisei_kano/smart_power_grid_wg/pdf/003_04_00.pdf

需要家にとって

需要家にとってはフィジカルPPAであれ、バーチャルPPAであれ、対象の電源が抑制されてしまうと再エネ調達に影響が出てしまいます。原子力の稼働状況も見ながらPPA等も考えて行く必要がありそうです。

タイトルとURLをコピーしました