産業用ヒートポンプの可能性

熱の脱炭素としてヒートポンプの活用が考えられます。再生可能エネルギーによる電気から熱を生み出すことで脱炭素を進めることが可能です。

ヒートポンプ

ヒートポンプは投入する電気から何倍もの熱エネルギーを作り出すことが出来る効率的な仕組みです(ヒートポンプの能力としてCOP(Coefficient of Performance)を使う。投入エネルギーに対して得られた冷熱または温熱エネルギーの比で数値が大きいほど効率的)。ヨーロッパでは支援策もあり、2013年以降、販売量が右肩上がりだった様ですが、ここへ来て支援策の打ち切り、縮小やガス価格が低下しているのに対し電気代が高くなっていることにより、2023年は販売量が減少した様です。

2023年の欧州ヒートポンプ販売数、2013年以降初の前年比減https://www.jetro.go.jp/biznews/2024/03/b6a155cc1680529c.html

産業用ヒートポンプ

産業用のヒートポンプで技術的に対応出来るのは165度までの温水、熱風、蒸気の様ですが、重点は90℃以下の温水需要とのことです。

産業ヒートポンプの概要と普及拡大についてhttps://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/shoene_shinene/sho_energy/pdf/046_01_00.pdf

累積導入容量を見てもほとんどが水熱源ヒートポンプでの温水供給と分かります。

2023 年度の産業用ヒートポンプ導入量把握調査結果 報告書              https://sangyo-hp.jeh-center.org/asset/00032/HP_chyousa/2023HPReport.pdf

2030年度の産業用ヒートポンプの累積導入目標は1,673,000kWです。一方で2023年度は導入量は253 台、29,999kW、2022年度が348 台、33,256kWと減っています。また2023年度までの累計導入量は4040台、540,041kWです。2030年度まで残り1,132,959kW導入する必要があり、毎年161,851kW導入しなければなりません。

(参考資料)技術シート  https://www.nedo.go.jp/content/100976604.pdf

2023年度が約30,000kWなので現状のペースでは到底目標を達成することが出来ません。

技術開発

上記技術シートによるとNEDOにおいて200℃までの供給温度範囲に対応し、熱源水温度80℃、加熱器出口温度180℃の条件でCOP3.5以上を達成するヒートポンプシステムの開発が進められている様です。

より高い温度まで対応できるとヒートポンプの可能性が広がりますが、一方で現状、ヒートポンプが伸び悩んでいる理由を解決しないと技術が進んだだけでは導入が進むかは分かりません。

導入に向けた課題

日本エレクトロヒートセンターによると導入が伸び悩んでいるのはシステムの認知度不足、導入を検討する人材の不足及び高コスト、に原因がある様です。

産業ヒートポンプの概要と普及拡大についてhttps://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/shoene_shinene/sho_energy/pdf/046_01_00.pdf

認知度不足については熱の脱炭素に取り組む必要性が今後高まると思われるので、需要家自らが調べ、検討を始めるのではないかと思われます。

導入を検討する人材の不足は人材育成などを積極的に行っていかないと解決が難しい点かと思います。

高コストについては導入を後押しする政府の支援策が期待されますが、導入量が増えて行けば量産効果も出て来るのではないかと思われます。

先日発表された第7次エネルギー基本計画(案)では以下の様にヒートポンプに関する記載があります。熱の脱炭素を担う重要なシステムになって行くと思いますので引き続きフォローしたいと思います。

2040年度に向けては、こうした電化や非化石転換を中心としつつ、ディマンドリスポンス(DR)の促進や、ヒートポンプやコージェネレーションなどの熱供給の効率化を含むエネルギー使用の合理化なども一体的に進めながら、規制と支援の両輪で各部門における取組を進めていく。

第7次エネルギー基本計画(案) https://www.enecho.meti.go.jp/committee/council/basic_policy_subcommittee/2024/067/067_006.pdf

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